FOMCに続いて開催された日銀の2017年3月金融政策決定会合は予想通りに波乱なし。FOMCでドルが売られた後は、乱高下こそあったもののドル/円も落ち着きました。
FXトレーダーの注目も、トランプ政権やオランダの選挙に集まっていましたね。
3月16日公表の金融政策運営と黒田日銀総裁の記者会見を振り返ってみます。余談ながら日銀のウェブサイトは、リニューアルされて見やすくなりました。
2017年3月の日銀金融政策決定会合
金融政策については変更ありません。現在の日銀金融政策はこちら
- 景気は緩やかな回復。海外も緩やかな成長で輸出は持ち直し。
- 個人消費は底堅く推移
- 住宅&公共投資は横ばい
- 在庫調整をは判定して鉱工業生産は持ち直し
- 物価上昇率は弱含み
- 消費者物価はエネルギー価格を反映して小幅のプラスに転じた後、2%に向けて上昇率を高める
日銀の考えるリスク要因
- 米国経済の動向及び金融政策の運営が国際金融市場に及ぼす影響
- 中国をはじめとする新興国・資源国経済
- 英国のEU離脱問題
- 金融セクターを含む欧州債務問題
- 地政学的リスク
米国・欧州は、それぞれ大きなリスクを抱えています。また、お隣の北朝鮮では、体制崩壊やクーデター・暴発などのリスクが存在していますね。
日本独自で抱えているリスクは、森友学園問題による突然の安倍晋三首相の辞任ぐらいでしょうか。
日銀はいつ利上げ方向に向かうのか?
世界的にデフレからインフレに進む中で、日銀のテーパリングや利上げが問題になっています。
そのため、黒田総裁は、16日の記者会見で長期金利目標の引き上げについて、「物価上昇率が1%に達すれば、引き上げるとは機械的に考えない」として、金利の上昇を牽制。
それでは、今後の日銀と米ドル/円相場について、金融機関関係者の意見を見てみましょう。
◆メリルリンチ証券の大崎秀一氏
- 物価上昇率が1%を超えて2%に近づけば、金利引き上げの議論が出てくるだろう
- 円安が進行して、コストプッシュ型のインフレになり、消費が減少する可能性がある。
- 黒田総裁は行きすぐた金融緩和を修正するのではないか
◆FPG証券の深谷幸司氏
- 海外金利の上昇による長期金利の上昇圧力を警戒
- 米利上げを織り込んで115円半ばまでドルが買われていた。
- FOMC後は、ドル高要因がなく、ドル/円の重しに。
- 米金利は上昇傾向にあり、ドル/円が110円台に下がる理由もない
◆JPモルガンの佐々木融氏
- コア消費者物価指数は年末に向けて+1.0%程度まで上昇するとの予想が多い
- 10年物国債金利のコントロール目標「0%」を引き上げるのではないか
- 日銀は、昨年9月で量的緩和策を事実上、止めている(ステルス・テーパリング)
- インフレ率が上昇すれば、金利引き上げを行うのではないか
インフレ率次第ながら、2017年後半辺りには、日銀の金融政策転換がありそうですね。
米国が単独で、利上げに向かうと金利バランスが崩れて、為替市場が荒れますから、日銀もそこは意識しているでしょう。
消費者物価指数:CPI(前年比)の比較
- 日本総合:2017年1月 0.4%
- 日本コア(食品・エネルギー除く) 0.2%
- 米国総合:2017年2月 2.7%
- 米国コア(食品・エネルギー除く):2017年2月 2.2%
- ユーロ:2017年2月 2.0%
- ユーロコア(食品・燃料除く):2017年2月 0.9%
欧米の物価上昇は、原油価格が50ドル前後に上昇したのを受けています。しかし、日本はまだまだ弱め。
FXトレーダーの皆様、消費者物価指数が1%を超えてくれば、日銀が動いてくることを意識してください。もし、ECB及び日銀が緩和から引締めに動き始めると為替相場はまだしも債券市場が大混乱になるリスクがあります。
米国の10年物国債金利が3%に近づいた時・ECBと日銀が動きそうな時を意識しておいてください。