ECB理事会は2016年3月10日に、サプライズで追加緩和を発表。追加緩和自体は予想されていましたが、その内容は予想を上回る規模。
この内容を受けて、市場は金融緩和=通貨安を連想して、ユーロ安へと。ところが、ドラギ総裁の会見で追加利下げの可能性を否定されたことで、一転してユーロ高へとトレンド転換。欧州株も下落。
ドイツからは、ラルフ・ブリンクハウ院内副総務が、ECBの追加緩和では、欧州が抱える経済問題は解決できず、不動産バブルのリスクありと指摘。各国政府による構造改革が必要と指摘。
前回のECBが実施した追加緩和辺りから、市場は、追加緩和や中央銀行がデフレ退治及び景気回復できると信じていません。これまで欧州及び日本で実施してきた緩和策が実効を上げていないとの考えが勢いを増しています。
2016年3月のECB理事会結果
- 主要政策金利であるリファイナンス金利:0.05%から0.00%に引き下げ
- 上限金利の限界貸出金利:0.30%から0.25%に引き下げ
- 下限金利の中銀預金金利はマイナス0.30%からマイナス0.40%に引き下げ
- 資産買入れ規模は、月間600億ユーロから800億ユーロに拡大
- 投資適格級の非金融機関発行の債券も買い入れ対象
ドラギ総裁の記者会見:バズーカ不発?で批判される。
- ユーロ圏はデフレではない。インフレ率は年内にはプラスに転じる。日本とは違う。
- ECBが何もしていなければ破壊的なデフレになっていた
- 貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)に需要があると予想
- 金利は資産買入れ期間終了後も低い水準にとどまる
- 一段の金利引き下げが必要になると思わない。もちろん状況や見通しを変えることはありえる
- マイナス金利導入は前向きな成果を上げている
- 銀行システム全体としての収益性は、マイナス金利を導入しても問題ないと裏付けるデータがある。個別の銀行を見るとそうとは限らない
- 貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)は2016年6月から2017年3月までに4回、4半期ごとに実施
- ユーロ圏内の需要は、金融政策と構造改革で拡大する雇用に支援される
- ECBは、、ユーロ圏の価格設定行動と賃金動向を注視する
- 原油価格の影響で数か月はインフレ率が低水準、またはマイナス圏に落ち込む可能性がある
- ユーロ圏の成長見通しリスクは下向き
- 景気回復は緩やかなペースで進む
- 金融刺激策により、インフレ率2%弱の目標ペースを加速させるように調整
インフレ&成長率見通し:2016年3月
欧州連合(EU)基準の消費者物価指数(HICP)
- 2016年:0.1%
- 2017年:1.3%
- 2018年:1.6%
ユーロ圏成長率
- 2016年:1.4%
- 2017年:1.7%
- 2018年:1.8%
2016年3月ECB理事会を参考にまとめました:ロイター
●ユーロ/ドルの30分足チャート:DMMFX
1.09台だったユーロ/ドル相場。FXトレーダーはこのECB理事会を見守っていたことでしょう。DMMFXでは1.08218まで下落。ところがドラギ総裁の会見で上昇しはじめ1.12台の高値を付ける。
下記のドラギ総裁会見を読んでも追加利下げを絶対しないではなく、今回の施策で当面OK。今後の状況次第で分からないという当たり前の事実を述べているだけ。
ユーロの下げが限られているような気がいたします。
●ユーロ/ドルの月足チャート:DMMFX
ユーロ/ドルの一段下げは難しいか?MACDやストキャスに少し上向き気配あり。
今後のECBは、運営が非常に難しくなってきそうです。ただ、ECBとFRBの金融政策の違いによるユーロ安シナリオは機能していないと思います。
もはや緩和の余地がほとんどないECBに対して、FRBは、利上げ停止から利下げ・量的緩和再開と緩和余地がありますので、その際は米ドル安ユーロ高へと進む可能性が高い。
ユーロ/円のスワップポイントは買ポジションがマイナス
DMMFXの取引レート画面
ユーロ/円の買いポジションをもった時のスワップポイントは-15円、売りポジションは15円。日本よりも低金利状態のユーロ。通貨安競争=金利引き下げ競争を行うも中銀の金融政策は限界との意見や議論が出ています。
不謹慎かもしれませんが緩和やマイナス金利をヤク中緩和と例える向きも。