金融庁と金融先物取引業協会は、FXトレードに新たにバイナリーオプション・スリッページ・自動売買の規制を導入します。2013年5月31日の日経新聞に詳しく掲載されました!
新しい法規制としてスリッページを制限
2013年の為替相場は、円安傾向により取引高が増えており、4月の取引代が443兆円と2008年11月の統計取得開始以来最大とのこと。
今回の法規制は下記の3点中心。
約定システム(スリッページ)の法規制
外国為替市場で投資家が注文を出すと値動き次第で、注文価格と約定価格にズレが生じることがあります。このズレがスリッページです。
今回の規制では、このスリッページが生じることは認めています。
ただし、投資家にとって有利(FX会社に不利)なレートの場合も取引が成立するように義務付けます。なお、逆指値注文の時や為替市場が大きく動いたときに生じやすくなります。
●スリッページを単純化した例:ドル/円の価格が100.50円の時に買い注文。
1.約定価格100.51円
投資家にとって不利なレートで約定。
2.約定価格100.49円
投資家にとって有利なレートで約定。
新規制では、1パターンのスリッページしか成立しない場合、自主規制違反として最大1億円の過怠金が課されます。
スリッページ規制の背景
相場が荒れた時など、どうしてもスリッページは生じやすい。為替は流動性が高い分、投資家側にも必ず注文は出した価格で成立するという考えがあります。
通常の為替相場だとそれで問題はありません。しかし、市場に衝撃を与える出来事、例えば、リーマンショックのような大手金融機関の破たんなどが起きれば、いくら流動性が高くても売買停止・窓空け・スプレッド拡大・スリッページの発生などが生じてしまいます。
そうなると顧客側も、話が違うとして、金融庁や金融先物取引業協会にクレームを入れます。FX会社側も競争が激しい中、広告やWebで自社のスプレッドや約定率を宣伝して、スリッページが生じにくいことをPR。
また、スプレッドを狭くした分の収益源として、生じたスリッページの一部をディーリング益にしている例も多々あります。大きく相場が動けば数銭の利益を得られる場合がありますからね。そこで、投資家保護の視点から、有利・不利双方のスリッページ双方を成立させるように規制で義務付けた訳です。
金融先物取引業協会:業務取扱規則(PDF):スリッページに関する規則を制定。顧客に有利な場合もスリップさせた価格で成立させなさいなど細則を規制。
この2つが誇大広告・投資家保護として、今回、規制が必要となった理由。
バイナリーオプションの法規制
スリッページに加えて、為替相場の変動を上がるか下がるかの選択肢から選び、投資を行う「バイナリーオプション」に規制が行われます。
五分後のドル/円相場を予測するなど超短期の商品に人気が集まり投機性や射幸性の高さが懸念され規制対象となりました。
金融庁は内閣府令を年内に改正し、取引の予想対象期間を最短2時間先とする方針。
バイナリーオプションの規制案について
自動売買システムの法規制
トレードを自己判断で行う裁量取引に対して、コンピューターのプログラムで自動売買を行うトレードがあります。代表的なものに、インヴァストのシストレ24やメタトレードなどのシステム。
システムトラブル時の対応・その他の問題解決のために、金融庁はFX会社に投資助言業の登録を促し、専任担当者を置くなどで体制整備を求める。
特にスリッページの法規制は、FX会社の収益の一つに影響を与えます。有利な場合も不利な場合も公正にしなさいという趣旨ですのでこのまま成立するでしょう。
そうなると収益的に苦しくなる可能性からスプレッド(売値と買値の差)を広げる方向に動いていくかもしれません。
幸い、現在の市場環境が良く為替取引量が増えているため、しばらくは収益も安泰だと思いますが、市場環境が悪くなるとスプレッドの狭さに耐えられず拡大方向に進む会社が増えそうです。
2013年5月31日