2017年の冬から2018年にかけて起きたFXの米ドル安。この理由は原油価格の上昇にあると野村証券の池田雄之輔氏はロイターに執筆。
米国の金利が上昇している中で、ドル高にならずドル安に動いている理由探しの一つとして参考になるのではないでしょうか。
原油価格と金利・米ドルの状況
◆日米の10円債金利 2018年1月23日 GMOクリック証券のFXネオ
2017年の秋から上昇しはじめた米10年債金利。金利上昇は短期的に通貨高要因であり、米ドルは上がりやすいのがセオリー。にも拘わらず、米ドルは全般的に下落。
◆米ドル/円とユーロ/ドルの日足チャート
FXでのメイン通貨ペア。米ドル/円とユーロ/ドルの日足チャートでの動き。米ドルは両通貨とのペアで安くなりました。
◆米ドル/円と原油価格の比較 月足チャート
2014年に原油価格が大きく下落した時には、米ドル/円が大きく上昇。日銀の追加緩和や公的年金の外貨シフト以上に、原油価格が100ドル近辺から半値以下に下落したことが大きいと池田氏は指摘。
現在は、当時と逆に原油価格が上昇している分、ドルが安くなっているということ。確かに上記のFXチャートを確認すると、相関関係があるように見えます。
米ドルと原油価格が関連する理由
その理由をドル実効レートにあると池田氏は指摘。ユーロ・英ポンド・仮名ドル・メキシコペソの4通貨で米ドルの実効レートの55%。
ドル実効レートとは何か。あらゆる通貨に対する米ドルの加重平均値である。従って、原油価格と正の相関を持つ通貨(対ドル)の合計の比重が高ければ、必然的にドル実効レートは逆に動いてしまう。長期的傾向として原油価格と同方向に動きやすい通貨の筆頭格はカナダドル、メキシコペソなどの産油国通貨だ。英ポンドも、北海油田の存在から伝統的に「原油銘柄」と見なされる。ユーロも、インフレ環境に敏感な欧州中銀(ECB)の政策姿勢を反映し、原油価格との正の相関が極めて高い。ロイター
米国の金利が上昇しても、それ以上に原油価格上昇による他通貨上昇の勢いが強くて、相対的に米ドルは下落しているとの指摘です。原油価格の1バレルあたり10ドルの上昇が約4%のドル安要因になっている。
さらに、地政学リスクが弱まっていること。ヘッジファンドの円ショート戦略の欠如もドル安の要因として指摘。
ただし、原油価格上昇の大きな要因となっているのが地政学リスクであることも言っておきたい。イランでの大規模デモ・核合意の見直しは原油供給に対するリスク要因であり、中東から北アフリカに関してのリスクは、むしろ高まっています。
原油価格の上昇理由は、他に、在庫減少・協調減産・シェール生産統計の悪化そしてドル安があげられます。
池田氏は、春先に原油価格が落ち着けば、米国の金利上昇に合わせて、米ドルが上がると予想しています。確かに、現在のように110円すら割り込みそうな円高は少し行き過ぎかもしれません。
日銀のテーパリングに賭けるファンドの米ドル売り円買いの動きと合わせて原油価格も気になります。