2017年も12月に入り、世界経済が安定成長の只中で、そろそろ日銀の金融正常化の足音が近づいてきました。
原油価格は、OPECの減産により50ドルを超えており、労働力不足での物価上昇がちらほらと生じています。次の景気後退がはじまる前に、日銀は出口戦略を行っておかないと苦しい立場に追い込まれてしまうでしょう。
日銀が出口戦略をスタートさせる時期がいつになるのか?FXでとっても気になる疑問です。
出口戦略を始めれば、為替相場は円高に動きかねず、来年のインフレ率・米ドル/円を見てからの2018-19年が有力な意見。
黒田日銀総裁の出口戦略はいつ?
異次元緩和の達成は、ここが最後のチャンス。
日銀の黒田総裁は、出口戦略の開始時期について、機械的なルールはない。出口に差し掛かった段階で議論すると突っぱねています。データ次第というFRBと似たような発言ながら、出口戦略の検討内容位は話してもいいのではないかと思います。
岩田日銀副総裁は、2017年4月25日に出口戦略のシミュレーションはしているものの、インフレ目標2%の達成まで遠いので、内容は控えていると発言。
◆消費者物価指数の推移:全国総合 2017年10月分まで 前年同月比
2016年の消費者物価指数は、前年同月比-0.1%。しかし、2017年は回復しており、月次で0.2~0.7%で推移。これでも目標には遠いんですけどね。
ただし、2018~19年が、世界経済好調の最後のサイクルとも言われており、ここが出口戦略のチャンスでしょう。
おそらく、成長率とインフレ率は、1%台がせいぜいで2%の定着は難しい。2019年10月の消費税率引き上げは、大きな変動要因。
元財務官の渡辺博史さんの意見
渡辺博史国際通貨研究所理事長は、2018年4月の黒田総裁の任期満了までに、出口戦略の見通しを明らかにすべきとブルームバーグのインタビュー(2017年10月23日)で語っています。
2%のインフレ目標に拘る必要はなく、金融政策の効果は薄れている。日銀はすでにテーパリングを開始しており、出口戦略は始まっているともいえる。ただし、日銀総裁は、黒田氏の再任だろうと考えているとのこと。
ちなみに、FX出来になる米ドル/円の水準は、110円~116-117円前後のドル高円安を予想。
伊藤 隆敏コロンビア大学教授の意見
2017年5月には、日本のインフレ率が2018年末までに2%に近づくと予想。
石油価格の上昇と賃上げが主な要因。
そして、2017年10月のテレビ東京で出口戦略を予想。
- ステルス・テーパリング(昨年9月以降)
- 長期金利ターゲット引き上げ(「データ次第」)
- 2%物価目標達成(2019年、日銀予想)
- 消費増税(2019年)
- 付利(現状マイナス金利)引上げ
- 日銀のバランスシート縮小
本格的な出口戦略の開始時期については、米長期金利が上昇した時期になるだろうとの考え。米国の長期金利が上がれば、日本の長期金利が上がっても、為替相場に極端な影響を与えないだろうという考え。
- 日本10年債金利:0.03%
- 米国10年債金利:2.39%
2017年12月1日
2016年半ばごろからはじまった世界経済の回復基調。日米ともに株価は上昇しています。消費税率を引き上げれば、インフレ目標達成にはプラスでも景気が冷え込む確率は高いでしょう。その後に出口戦略を行えば、日銀の責任問題になるのは明白。その前に、出口戦略に取りかかる方が得策というのは、エコノミストの間で議論が盛り上がりつつある様子。
2019年になってからでは、少々、時期が遅いように感じます。とはいえ、出口戦略は時期よりもデータ次第であることは確か。
インフレ率2%を優先するのか米国の長期金利上昇をきっかけとするのか。それとも他に問題が生じるのでしょうか。