2017年の米ドルが弱い理由を佐々木融氏がロイターで語っています。
米ドルは、ユーロ圏の経済が好調に推移していること・選挙でユーロを維持する側が勝利したこと・ECBのテーパリングが近いことを材料にユーロ高ドル安の動きが出ています。
そして、日本円やスイスフランに対しても弱さを見せています。その理由を佐々木融氏の説明から見てみましょう。ロイターの記事
米ドルが弱い理由
米ドル/円が円高に動いているのは、日本円が強いのではなく米ドルが弱いことが理由。円は主要22通貨の中で下から9番目に弱い。
- トランプ政権の政治混乱
- 新興国への資本流入
- 投資家のリスクテーク志向
◆米ドルと日本円の週足チャート:2017年8月8日
FXネオ
米ドルが弱いのは、トランプ政権の政治的混乱。もともと、米国第一を公約として保護主義的な政策を掲げているトランプ政権。
インフラ整備・減税によって、米国に資金が集まることによる米ドル高の面に対して、ロシアゲート疑惑をはじめとした政治的な問題やメディアとの争いが米ドル下落に向かわせています。
さて、次に佐々木氏があげるのが、新興国への資本の流れ。
2014年~15年は新興国の平均成長率が鈍り、先進国が成長した時期。その中で、FRBのテーパリングが行われて2015年末に利上げを開始。
この時期は、米ドルが主要22通貨の中で最強の座に着くことに。この間は、新興国から米国に投資資金が戻って、米ドルが上昇。
一方、2016年以降に新興国と先進国の平均成長率の差は拡大し、割高のドルから新興国へマネーが戻るという事態に。
経済成長率の推移:世界経済のネタ帳
こうした状況の中で、世界経済は全体的に安定しており、投資家のリスクテークは強め。それゆえに米ドルや日本円は資本調達通貨として売られている。FXでもスワップポイント狙いのキャリートレードが有名。
リスクテーク志向が強い状況下では、円の方が大抵「弱いドル」よりも弱くなり、ドル円は上昇するケースが多い。だが、今回の場合、これまでの数年間で、ドルは割高な水準まで上昇し、円は逆に割安な水準まで下落していたため、「弱い円」よりドルが弱くなり、ドル円が下落しているものと考えられる。 ちなみに、前回のFRBによる利上げ局面(2004年6月から2006年6月)でも、利上げ開始日から最後の利上げ日までのドルのパフォーマンスは主要22通貨中16位で、名目実効レートベースでは5%程度下落している。
しばしば指摘しているように、ドルが利上げ期待の高まりを背景に上昇するのは利上げ前までの数カ月間であることが多い。前回の利上げ局面でも、ドルは利上げ開始の1カ月半前までの4カ月間、力強く上昇し、主要22通貨中で最強通貨となっていた。
日米金利差だけではない、マネーの動き。こういった面もFXで利益を上げるためには重要なポイントです。新興国経済が堅調であれば利率の高いところへお金は流れます。先進国は、軒並み、低金利が続いており、少しでも資産を増やしたい方は、新興国にお金を投資しますからね。実際のところは、個人でお金を動かすよりも投資信託・ファンドといった専門家に託すスタイルになります。