2018年3月4日のイタリア総選挙の結果は、レンツィ首相の与党が大敗。単独では、五つ星運動が勝利するも過半数を獲得できず宙吊り議会となりました。これにより、EU及びユーロに対する警戒感が増してくるでしょう。FXでのユーロは欧州の景気回復・ECBの金融政策変化に伴い上昇トレンドにありましたが、イタリア政局は大きなリスクになります。
イタリアの2018年3月総選挙結果
●中道右派連合
代議員:265
元老院:137
ベルルスコーニの「フォルツァ・イタリア」、マテオ・サルヴィーニの「レーガ(北部同盟)」、ジョルジャ・メローニの「フラテッリ・ディタリア(イタリアの同胞)」の連合。
●五つ星運動
代議員:227
元老院:112
●中道左派連合(与党の民主党など)
代議員:122
元老院:60
さて、これからどうなるかですが、3月23日の新議会招集からスタート。五つ星運動と同盟が上下位両院の議長を分け合うとの見通しが有力。しかし、ベルルスコーニ氏のフォルツァは、同盟が五つ星運動と組めば、自党は協力しないと警告。
今後のイタリア政局におけるありえるシナリオは、
- 民主党と右派連合
- 民主党と五つ星運動
- 五つ星運動と同盟:議席としては安定するも左派的な五つ星運動と極右の同盟は政策的に相容れにくい。
- 主要政党の連合
国民の支持が厚いのは、五つ星運動と同盟ながら・・・この組み合わせが上手くいくかは謎。場合によっては再選挙もありえます。民主党は、難民受け入れに前向き、中道右派連合及び五つ星運動は、難民受け入れには厳しい姿勢を見せています。
イタリア総選挙後の課題
1.反EU政府の誕生:反EU・反ユーロを掲げる政府の誕生は、欧州の政治統合を大きく遅らせることになります。場合によっては、ユーロ離脱の可能性すら出てくるリスクも
2.イタリアの債務問題:約2兆3000億ユーロになったイタリアの債務をどうするか。選挙の票を目当てに大盤ブル枚の公約を行った政党が政権を取った後にどうするのか。
公約の柱は、現在23%から43%までの段階方式となっている個人・法人の所得税率を、一律23%未満に統一する措置。これは500億─800億ユーロ(623億5000万─997億5000万ドル)の税収減につながる見通しだ。
新興政治組織「五つ星運動」と与党民主党の公約も、減税と支出拡大を通じて欧州連合(EU)と合意済みの財政赤字のGDP比率を引き上げるもので、中道右派と大差ない。ニューズウィーク
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ECBは、欧州の景気回復によって、緩和政策を引き締め方向に切り替えようとしています。一方で、統一通貨ユーロの問題点であるドイツの強さと周辺国の弱さに変化はありません。
◆経常収支の推移 ドイツ・イタリア・フランス・スペイン 世界経済のネタ帳
◆インフレ率の推移
◆経済成長率の推移
欧州各国の経済状況は、かなり良くなりました。
各国の経済が好調な間は、EU及びユーロ離脱の方向には進みにくい。難民問題等が焦点になってくるでしょう。ゴルディロックス経済が継続すれば、問題は起きにくい。保護貿易・貿易戦争などにより、経済成長がダウンすると、ドイツとその他の国の格差が開き、ユーロ離脱議論が巻き起こってくると思います。
3.イタリアの南北問題と格差:イタリアは豊かな北部と裕福でない南部に分かれます。
2018年3月のイタリア総選挙でも、右派連合は北部票・南部は五つ星運動支持で、南北分断が激しいのが特徴。
『右派連合』はフラットタックス導入で裕福な北部の人々の票をさらい、『5つ星』は、ベーシックインカム(仕事のない人々にも、月780ユーロのサラリーを保証。充分な収入がない場合も、780ユーロまで段階的に保証)で、失業率の高い南部の票を総なめにしました。イタリアの春
アメリカも海岸沿いと内陸の分断が激しくなっています。ドイツは、ギリシャなどの危機に対して、財政移転による解決にとことん抵抗しました。ユーロは、政治統合のない通貨統合であり、常にそれが問題となります。
そして、国家の中にも豊かな地域とそうでない地域があり、豊かな地域は、それ以外に財政支援を行います。そこに対する反発も近年出てきており、イタリアの総選挙でも、その方向性が明確になりました。