7月25・26日に開催されたFOMCの議事録が、8月16日に公開されましたが、インフレが弱いことについて、悩んでいることが明らかになりました。
そのため、利上げを行うかどうかの意見は分かれており、年内利上げを行うかどうかすら疑問が出ています。9月利上げの可能性は弱く、早くても12月。
バランスシートの縮小に関しては、行う方向で一致。米議会の債務上限引き上げが頓挫しない限り、開始するでしょう。スケジュール的に、9月19・20日がFOMCなので、9月末が期限の債務上限問題とは微妙なタイミング。
インフレ率の低下は特殊用意なのか?苦しむFRB
FRBは、2017年に入ってのインフレ率低下を特殊要因と見ており、いずれ加速していくという見方に変化はありません。
雇用拡大など労働市場の強さ・株高など資産価格の上昇に対して、伸びないインフレ率の矛盾にFRBも悩んでいる様子。
インフレ率低下の特殊要因は、携帯電話通信料の引き下げや処方箋薬の価格低下が原因であると6月のFOMCでイエレン議長は明らかにしています。
ちなみに、消費者物価指数の前年比は、2017年1月から4月までは2%以上。5月:1.9%、6月:1.6%、7月:1.7%と減速気味。しかし、冬のインフレ上昇こそ、前年の原油安に対する反動であり、いまさら、資産価格を除くインフレ率が急上昇するのは、まだ先のような気がします。
◆NYダウ、米2年債、10年債、原油 GMOクリック証券のFXネオ 2017年8月25日
上がらない原油価格・長期金利。これでは、インフレ率の加速はまだ先。
インフレは起きにくいのでは?
グローバル化による賃金引下げ、インターネット通販による価格比較の流れのなかでは、トランプ政権の米国回帰にも限界があるのではと思います。⇒賃金上昇によるインフレは難しい?
数年後を考えると資源争奪戦・水・食料争い・戦争などのリスクはあります。ただ、それすらAI及び自動化の進歩、新エネルギーの開発、中国でのシェール開発などが進めば、インフレが進行する可能性は弱いと考えます。
イエレン議長は、インフレ率が今後2年間で2%回復すると考えているようですが、労働市場は強くなるもインフレ鈍化の流れに変化ありません。これだけ、少子化・低失業率の日本ですらインフレ率が上がらないのですから。
FRBメンバーの一部は、株高・雇用の強さからインフレがオーバーシュートするリスクを指摘。反転コストが大になると警戒。確かに、株価・不動産市場は高値が続き、富裕層を潤わせる一方で、株や不動産を持たない人との格差は広がっています。量的緩和を含む金融緩和は資産格差を拡大させる方向に広がると共に、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるというトリクルダウン理論が成立しないであろうことは確実視されています。
インフレ目標の引き下げ
その点からは、2%のインフレ目標に拘り過ぎるのは危険なのではないでしょうか。日銀の黒田総裁は、先進国の中央銀行が共通して同じインフレ目標を掲げることで、為替相場を安定させると主張しています。その点からすると、インフレ目標を引き下げる時は、一斉に行ってくることが予想できますね。
ジャクソンホールでイエレン議長が何を語るのか楽しみです。
●バランスシート
「ほとんどのメンバーは次回の会合“an upcoming meeting”でバランスシートの縮小に動くことを支持」
●インフレ
「特殊要因で、インフレは弱いと見ている」
「多くのメンバー、インフレは2%割れで予想より長期間推移すると予想」
「数人のBメンバー、インフレリスクはおそらく下方である可能性を指摘」
「インフレは今後数年で加速すると予想」
「インフレが抑制されているかどうかの判断で意見が分かれた」
「一部メンバーがインフレに懸念を表明し、辛抱強い姿勢が必要だと主張」
「他のメンバーは利上げを待ちすぎると、インフレの過熱につながる可能性を指摘」
「数人のメンバー、低インフレの長期化を懸念」FOMC議事録:2017年7月開催分 ロイター
- 自動化による低インフレ:テスラのイーロン・マスクは、自動化が進めばインフレは起きないと主張
- 原油価格が50ドルになればと2%達成に近づくと語るイエレン議長
- 2016年のジャクソンホールでのイエレン議長講演
ジャクソンホール待ちの為替相場&FXトレーダーながら、具体的より未来に向けた抽象的な話しがメインになると思います。
FRBの17日の発表によれば、イエレン議長はシンポジウムで、現地時間25日午前8時(日本時間午後11時)から金融の安定をテーマに講演を行う:ブルームバーグ