トランプ大統領は、メキシコに壁を作る・NAFTAの再交渉とメキシコやカナダに対して厳しい姿勢で臨む公約を掲げていました。日本にとっても環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱や貿易に対する姿勢を見る上で大事な点。
実際の就任前からフォードやトヨタに対して圧力をかけています。メキシコペソの動きを見ておきましょう。なお、FXでメキシコペソを取引できるのは、ヒロセ通商や外為どっとコムなど・・・数社です。
メキシコペソ現在:NAFTA再交渉
トランプ氏の保護貿易ポリシーをダイレクトに受けるメキシコは、通貨のペソが対ドルで下落しています。2017年1月5日には、メキシコ中銀が米ドル買いドル売りの介入を実施。
米ドル/メキシコペソは、トランプ大統領当選以降に大きく下落。
●2016年11月1日:19.1910⇒2017年1月20日:21.9416
★メキシコペソ/円の週足チャート:ヒロセ通商のLIONFX
メキシコペソ/円は、大きな下落を見せずに横這い。
フォードやトヨタへのトランプ氏の影響
米国のフォードは、メキシコのサンルイスポトシ州に16億ドルを投じて作る予定の工場計画を撤回。
フォードは今回の撤退理由について、同州でも製造を予定していた小型車に対する需要が北米で減退していることを挙げた。ただ、トランプ氏は昨年11月の大統領当選の数カ月前から、メキシコ事業に関してフォードを激しく批判していた。ロイター
表向きは、小型車需要が減ったことを理由にしていますが、誰もがトランプ氏の圧力だと思っています。
同氏は「トヨタ自動車はメキシコのバハ(バハ・カリフォルニア州)に米国向けカローラの新工場を建設するそうだが、とんでもない。米国に工場を建設するか、さもなければ多額の国境税を支払ってもらう」と述べた。ロイター
トヨタに対しても、メキシコに作った場合は、国境税を課すとのプレッシャー。
トランプ氏の対メキシコ強硬政策
- 就任早々に北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明する
- メキシコに移転した企業に35%の関税をかける
- WTO脱退も視野に
- メキシコ国境に壁を建設。費用はメキシコが負担。応じない場合は、在米メキシコ人移民のメキシコ本国への送金を禁じる。
- 不法移民の強制送還
メキシコの移民送金は、2015年時点で約250億ドルとのこと。なんとGDP比の2.2%、雇用者報酬比7.9%:メキシコ中銀及びみずほ銀行調査。
これが止められたら痛い。
●メキシコの経常収支自体は赤字:出典:世界経済のネタ帳
- 米国とメキシコの壁建設費用:50~100億ドル(低コストのバーチャル・ドローン案もあり)
- メキシコ系移民のうち、不法移民は約半分
- 米国の不法移民は、米労働力の5%を超える
- 米労働力人口比率:農業(17%)、建設(13%)、娯楽・宿泊サービス(9%)
- ペニャニエト大統領の支持率は、2016年8月で23%と低い
みずほ総合研究所のレポートから抜粋
2017年前半のメキシコ及びメキシコペソは、大きな苦境に立たされています。NAFTAの再交渉・米国内のメキシコ系移民の状況悪化などは、メキシコの経常収支をさらに悪化させます。ただでさえ、悪い治安もひどくなるかもしれません。
最悪のシナリオは、トランプ氏の圧力に対して、強硬派が政権を取り、報復行為の応酬になること。
明るい未来は、メキシコぺソが大幅下落した結果、世界的な輸出競争力を回復して、経済・治安も回復に向かうシナリオ。
NAFTAの再交渉
米国・カナダ・メキシコの三カ国は、1994年に発効したNAFTAの元で、自由貿易を謳歌しています。ほとんどの品物で関税はゼロ。
メキシコは、NAFTAの締結で大きなメリットを得ています。
★締結後にメキシコの輸出は7.2倍に増え(1993年⇒2015年)、2015年:域内の貿易収支は1,227億ドルの黒字。
米国は、輸出こそ3.6倍に増えたものの、域内の貿易収支は735億ドルの赤字。
企業側からすれば、メキシコは、地理的に近く、労働コストが米国内より安い。しかも関税はかからないと良いことばかり。こぞって、生産拠点を移したのも分かります。
その分、米国内は産業空洞化に見舞われて仕事が減ったのが、トランプ票に繋がりました。今朝のラジオでも、仕事のあるところに移動すれば、いくらでも仕事はある。仕事の無いところにしがみついているからだという意見がありました。
グローバル化及び経済効率の点では正しい意見です。ゴールドラッシュ・フロンティア・米国移住などもそうですね。
しかし、一方では、幼子・老親を抱えて移住や移転できない人も大勢います。住む家や技能の問題もあるでしょうし、自由市場・経済学の考え通りに人は動きませんし動けません。
FXでメキシコペソを売買する場合、2017年は波乱の年になりますから、ご注意ください。