イタリア政治リスクが、非常に高まり、リスクオフの動きが激化。米ドル/円も円高に動いています。総選挙で勝った五つ星運動と同盟の選んだサボナ氏がマッタレッラ大統領に拒否されたために、ユーロ離脱リスクが高まりました。
FXでは、ユーロ/円が大きく下落。ユーロは、米ドルやスイスフランに対しても弱い。
◆米ドル/円をはじめとするFXの日足チャート GMOクリック証券のFXネオ
2018年5月29日
イタリアの政局は待ったなし
イタリア・ポルトガル・スペインなどの長期金利は一気に急騰。イタリアは一晩で100bpも上昇し、3%超えとなり、かなりの厳しい状況。
イタリアは、選挙に勝った「五つ星運動」と「同盟」が連立政権樹立を目指すも、次期首相に指名されたジュセッペ・コンテ氏が経済財務相に任命しようとしたパオロ・サボナ氏が、ユーロ離脱を主張していることから、マッタレッラ大統領が拒否。
ユーロ離脱リスクを冒さない人物を求めてのこと。つまり、パオロ・サボナ氏及びユーロ離脱に向かう動きを危惧しての組閣拒否。
- 連立政権の草案にユーロ離脱の手続きが含まれていた。連立政権側はユーロ離脱を確実に選択肢に入れています。
- イタリア国債の利回り:ブルームバーグ
- パオロ・サボナ氏の経歴:wiki
マッタレッラ大統領は、IMFの元財政局長、カルロ・コッタレッリ氏に暫定政権樹立を委ねる方向。予算案及び再選挙の準備が使命。
当然、選挙で選ばれた五つ星運動&同盟側は、怒りを見せており、大統領の弾劾なども視野に入れている様子。
次回選挙は、ユーロ離脱が焦点に:エリート対大衆の対決か
大統領は、ユーロ離脱派の財務相を拒否したことで、次回選挙の争点にユーロ離脱か否かの問題がクローズアップされることになりそうです。
しかも暫定政権にIMFの元高官を指名したことで、欧州内にくすぶる国家主権とユーロの官僚主義の対立像が明確になるのではないでしょうか。
ユーロ離脱派の力が強まりそう。次回の選挙、争点は3つ
- ユーロ離脱か否か
- イタリアの国家主権とEU官僚の中央集権化
- 国家の民主主義とエリートの指導
結局、この3つは同じ穴のムジナ。五つ星運動が大衆迎合主義(ポピュリズム)と揶揄されるところからも、EUという巨大な連合組織による中央集権とイタリアの国家主権や民主主義との対立。
最も簡単な言葉にすると、エリート対大衆・・・次回選挙はとても重要な選挙になりそうです。
しかも、イタリア国内の総選挙結果を拒否するかのような大統領の拒否権と組閣によって、反ユーロ・反エリート政党が伸びるのではないかとのリスクが警戒されて、イタリア国債の売り(金利上昇)とユーロ下落が起きています。
イタリア総選挙の結果次第で、スペイン・ポルトガル・ギリシャなどの国々は大きなショックを受けるでしょう。雪崩れをうってのユーロ離脱もありえるかもしれません。
FX的には、ゴタゴタが続く間は、ユーロが売られやすい。実際に、イタリアやギリシャがユーロ離脱すれば、ドイツやフランスの力が相対的に強まるためにユーロ高になりやすいと考えます。(いつになるかまだまだ先)
結局、連立合意でコンテ政権発足に
マッタレッラ大統領が待ったをかけたパオロ・サボナ氏は、欧州担当相に就任することになりました。
- 首相:ジュゼッペ・コンテ氏 法学者
- 経済相:ジョバンニ・トリア 経済学者
- 内相:マッテオ・サルビーニ 同盟書記長
- 産業・労働担当相:ルイジ・ディ・マイオ 五つ星運動党首
- 外相:エンツォ・モアベロ・ミラネージ 元欧州担当相
これで、何とかイタリアの政治的空白とユーロ離脱を巡る再選挙は避けられる様子。次に待ち構えるのは、五つ星運動&同盟が掲げる歳出増大政策です。緊縮財政を求めるEU&IMFとの衝突は避けられないのではないかと考えます。
特に、欧州の景気後退が本物であれば、まともや欧州債務危機に見舞われかねません。