2018年5月の米ドル/円相場は、111円に達し、更なる上昇を伺いそうなムード。米10年債利回りは3%台を超えており、日米金利差も3%超えを果たしました。そして、原油価格もWTIが70ドルを上回っており、インフレの動きが出ています。
欧州は、イタリア政局の行方&ドイツ経済の減速でまたもやユーロが下落。
日本も、インフレ率が上向かず、黒田日銀総裁は、2%目標達成の期限を外してしまいました。
米ドル高はどこまで続くのでしょうか。
米ドル高トレンド継続の理由はトランプ政権と世界経済の鈍化
まず、みずほ証券のFXストラテジスト 鈴木健吾氏の意見を確認してみます。
ドル高トレンドは、米国景気&政治への見方が変化したとの理由が第一。
2009年7月からの米国景気拡大は、95カ月となり、2018年にピークを迎えて2019年に減速というのが大方の予想。ところが、トランプ減税の成立で、米景気減速時期は、先送りとの見方が出ており、鈴木健吾氏も1年程度の先送りへと変化。
トランプ政権の評価は180℃反転
◆2017年半ばごろの評価は最悪
- 予算方針ははっきりせず。
- イスラム圏7か国からの入国禁止令は裁判所に差し止められた
- オバマケア代替法案は、骨抜き
- メキシコの壁建設はめどが立たず
- ロシア疑惑問題は炎上
◆2018年5月の評価は良好
- 減税法案の成立
- 債務上限及び暫定予算の期限延長
- 貿易問題は欧州及び中国と交渉中
- 韓国と自由貿易協定の見直しで合意
- シリアに軍事攻撃&ISの衰退
- 北朝鮮に拘束された米国人を解放
- 北朝鮮の非核化に向けて会談予定
- 在イスラエル米大使館のエルサレム移転
こう見ると、トランプ大統領は公約を着々と実行しつつあることが分かります。
世界景気鈍化によるドル高トレンド
2017年は、世界経済の好調で、株高の時期。カナダや英中銀の利上げが行われました。
そして、次に緩和解除=金融引締めに向かう国にマネーがシフトされた可能性があるとの指摘。実際、欧州の緩和解除を見越して、ユーロに資金が入り、ユーロ高を演出しました。
ところが、2018年は、世界景気の勢いは鈍り、景気指数はピークアウト。英中銀や欧州中銀の引締め路線は様子見。
世界経済の鈍化は下記の記事で詳しく書きました。
日本も1-3月期GDPが前期比マイナス。アルゼンチンやトルコは通貨安が顕著。
2017年の世界経済好調を受けて、新興国や欧州に移ったマネーが米国にシフトして、米ドル高となっている可能性あり。
◆米ドル/円の日足チャート 2018年5月22日 アイネットFX ペンタゴンチャートでは、111円が一つの達成レベル。トレンドは上向き。
鈴木健吾氏は、年末にかけて113円もあり得ると予想。
直近の米ドル/円は、米中通商会議が前向きな結論に終わったことを好感して上昇。111円台に乗せています。
中国は、米国製品の購入を大幅に増やすことで合意。関税引き上げを保留し、貿易戦争を保留する方向性で一致。これ、まさに、日米貿易摩擦と同じような経緯。最終的に、日本の円高やバブル崩壊、中国への矛先転換で解決することになりました。その過程では、円高や米国への工場移転・内需拡大と様々な要求を突き付けられたもの。
- 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁:完全雇用とインフレ率を2%とする連邦準備理事会(FRB)の目標は達成に近付いており、米国の経済成長率は、今年2.5%あたりを予想。
- 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁:インフレ率は上昇しており、年内2回もしくは3回の利上げを実施する必要がある。
米FRBは、2018年に、何回の利上げを行うのでしょうか。2回なら予想通り。3回だと予想より少し上。インフレ率が思わぬ上昇をすれば3回の利上げもありえる状況になりつつあります。すると、米ドル/円も113円や115円を目指す可能性あり。
現状、米ドル/円は、日米金利差に敏感に動いていますから、米国の利上げには、素直に反応しやすい環境です。