米金利上昇で、ゴルディロックス(適温)経済のゆくえは怪しくなっています。世界経済の景気は、これから変調していくのでしょうか。
何といっても米国の金融引締めからの長期金利上昇が大きい。一時的には3%まで進んだことで、新興国通貨は下落。マネーの逆流が生じています。
ゴルディロックス経済の終りがはじまった
そのため、アルゼンチンは通貨ペソ防衛のために、政策金利を40%まで引き上げ。新興国株価は下落。
ユーロ経済の鈍化の影響でユーロも下落。
日本もインフレ率が上がらずに、金融政策の変更が遅れており、円安傾向。
ゴルディロックス経済の終りは、日米欧の金融政策
ロイターでのゴルディロックス経済の特集記事を確認してみると、日米欧の金融政策に対する市場の見方が変わったのが大きいと三井住友銀行の森谷亨氏は指摘。
- 米国:大型減税をはじめとした財政拡張政策。FRBは米経済に強気で、利上げは継続
- 日銀:出口戦略はまだ先。
- 欧州中央銀行:2018年に入り、経済指標が悪化。債券買い入れプログラムを延長する可能性あり
日米欧と金融政策の違いが顕著で、米ドル高の動きが生じています。
パウエルFRB議長は、5月8日に、新興国経済の波乱は米国の利上げが原因ではなく、新興国市場は、米国の金融引締めを乗り切る力があると発言。チューリッヒでのIMF&スイス国立銀行の会議で講演。
これは、アルゼンチンの大幅利上げ後の発言であり、パウエルFRB議長の考えとして、新興国に優しい政策はしない。米国優先の表明でしょう。世界的に危機が広がれば、別として、小さい炎程度では動かないということになりそうです。
ゴルディロックス経済こそが異常事態
実際、ゴルディロックス経済の方が異常事態であり、景気が良くなれば、金利が上がるのは当たり前。そうでなければ、景気の過熱や低金利に慣れた資金が大量に流入し、あちこちでバブル化が起きるでしょう。
- 米国実質金利は5年タームで0.6%台後半
- サンフランシスコ連銀の自然利子率0.44%(2017年10月時点)
米国の実質金利が自然利子率を大きく上回ったのは三回で、いずれも景気後退前。
- 90年代後半から2000年頃
- 2005-07年
- 2008-09年
経済には10年サイクルという考えもあり、年代の終り頃に、経済危機が生じやすいというジンクスも忘れてはいけません。
新興国からの資金流出は限定的であったとしても、低金利時代に膨張した民間債務が懸念材料としてくすぶる。国際決済銀行(BIS)のデータでは、新興国の民間債務(金融除く)は昨年末時点で51兆7938億ドル(約5645兆円)。GDP比では144%から191%に拡大しており、金利上昇によるデフォルト・リスクは大きくなっている。ロイター:ゴルディロックスの終り
JPモルガンの重見氏によるとゴルディロックスの終りの始りはスタート。二年程のタイムラグがあることから、本当の終りはまだ先。
トレイダーズウェブの山下氏は、債券自警団たちが、金利上昇に強い警戒感を抱いているとして、ゴルディロックス経済の終りについて記事を書いています。
ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ社長は、インフレを誘発する恐れのある金融・財政政策に抗議して、債券売りを仕掛ける投資家達のことを「債券自警団」と命名した。
心理的節目の米長期金利3%超えは、米経済か新興国にダメージという記事を書きましたが、米ドルの上昇による新興国危機という形が、ゴルディロックス経済の終りのきっかけとなりそうです。