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  1. ユーロと欧州
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グローバル経済の政治的なトリレンマ:ユーロという実験で通貨同盟の困難さが判明

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ユーロの実験を通して、通貨同盟=巨大な中央集権組織のむずかしさが浮き彫りになりました。ハーバード大学のダニ・ロドリック氏は、グローバル経済の政治的トリレンマとして、この現象を解説。

イングランド銀行元総裁のマーヴィン・キング氏もユーロ及び通貨同盟のミライを悲観的に見ています。だからこそ、イギリスは、ユーロに参加せず、最終的にブレグジットでEUからの離脱を選んだのでしょう。となると、いずれ、ユーロの崩壊をFX・外貨預金トレーダーは、覚悟しておかないといけません。

通貨同盟は、中央集権のエリートと国家及び民主主義の対立を呼ぶ

欧州政治は、極右と極左が勢力を拡大し、主流派であった中道右派・左派が苦戦。

最もFXに影響を与えたフランス大統領選挙では、EU残留派のマクロン候補が勝利したものの、ルペン候補優勢の時もあり、ユーロ崩壊が現実味を帯びた程。

現在、ユーロの通貨同盟は、EUという巨大な官僚組織の元で中央集権化したエリートと南欧州諸国を中心に国家主権と民主主義を侵害されることを恐れる民衆との衝突という事態に至っています。幸い、2016年からの経済回復のおかげで、問題はやや落ち着きを見せているものの、地下でマグマはふつふつと煮えたぎっている状態。

2015年には、ECをはじめとした中央機関が、財政同盟を求める報告書を出し、ユーロ圏全体の財務大臣を置くという考えを示しました。これは、EU圏内の国家主権を弱めて、中央機関に力を移すことになる動き。ユーロを維持し、守るためには必要な措置ですが、欧州の民たちの多くはこれを望んでいません。

以前に、単一通貨ユーロの問題点でも書きましたが、ドイツと他国の経済格差や失業率を埋めるための方法として、考えられているのが労働力の移動。失業率の高い国から低い国への職を求めての移動。これは、幼い頃から欧州中を飛び回るエリートならば、何の問題もなし。しかし、幼い頃からその土地とたまに観光で行く位の民衆を一緒にしてはいけません。

スペイン・ギリシャ等で、いくら失業率が高くなっても、ドイツなどに移住する人間は少数でした。

オトマール・イッシングの言によると、政治同盟は、メンバー諸国の財政政策の主権を侵食するという裏口を通じて達成することはできない。財政移転を強制すれば、移転を受ける国でモラルハザードを招き、移転をする国では抵抗が生まれる。欧州・米国・IMFなど国際機関のエリートたちは、平和と危機解決を目的に、救済を実行して財政移転を行える政治経済同盟を目指したが、結果的に欧州を分断させるタネをまくだけに終わった。錬金術の終り:マーヴィン・キング

マーヴィン・キング氏は、ユーロと欧州の政治経済同盟は、欧州を分断させる結果に終わったと考えています。欧州の政治が過激化しつつあるのは、民衆のせいというより、欧州の中央集権化・ユーロこそがその原因であると指摘。現代の若者は・・・、思想的な問題・・・ではないということ。

◆ユーロ/ドルの月足チャート:JFX 2018年4月3日

ユーロドルの動き

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ユーロは、ドイツにとっては割安な通貨で、他の諸国には割高な通貨となるため、ドイツの貿易黒字は大幅に増加。ユーロ安の影響もあり景気回復するも、2017年以降のユーロ高が続けば、またも南欧州や東欧から悲鳴が聞こえてきそう。

ユーロの危うい未来

となると、ユーロの今後はかなり危うい。度々訪れる経済危機の度に、中央集権化を進めて政治経済同盟を実行し、国家主権及び民主主義をなし崩しにしていくことで、ユーロ連邦を作る以外の道はありません。なかなか厳しい道ですが。

キング氏も下記のシナリオを提唱。

1.ドイツの援助継続:自国の納税者に重い負担を強いて、ユーロ圏の弱い仲間(ギリシャやスペイン・ポルトガル)を支える。南欧諸国に加えて東欧諸国も加わっている中で、ユーロ安から恩恵を受けているドイツが加盟国を助ける構図。ドイツの不満と他国のモラルハザードとドイツへの怒りが溜まる

2.ドイツのユーロ離脱:欧州を束ねるユーロ・通貨同盟をドイツが停止及び脱退。これは、世界のFX・通貨に大きな激震を与えるシナリオ。

1と2の中間が、現実的なシナリオながら、なかなか上手く進まず。

3.南欧州のユーロ離脱:南欧州諸国の有権者は、大量失業と優秀な若者の流出という負担を続けることにうんざり。ユーロ圏から離脱を民主的に決定。ユーロ圏からの離脱は、混乱・生活水準の低下などのデメリットもあるものの、ユーロ維持が、緊縮財政・大量失業では、割りに合わない。ユーロ圏を離脱すれば、長期の利益は短期のコストを上回る可能性あり。

グローバル経済の政治的トリレンマ

ハーバード大学のダニ・ロドリックが、ユーロや通貨同盟の抱えるジレンマを学術的に解説しています。これをグローバル経済の政治的トリレンマと呼ぶ。

  • 民主主義
  • 国家主権
  • 経済統合(グローバル化)

この3つを同時に達成することは不可能という理論。欧州各国で起きているように、民衆の明確な支持なしで、国家主権が脅かされれば、民主主義は揺らぐことになるというテーマ。

1.『グローバル化と国家主権をとれば民主主義が成立しない』

2.『グローバル化と民主主義をとれば国家主権が成立しない』

3.『国家主権と民主主義をとればグローバル化が成立しない』

となるとしている。例として、1.の代表が共産中国であり、2.の代表がEU加盟各国であるとしている。wiki:世界経済の政治的トリレンマ

経済・金融市場だけを統合して、国家を従来のままにしておくと、EUのようになる。

経済統合をすれば、国境を超えたトレードで、生じる取引コストがない方が良いはず。ところが、実際には様々な国家による規制やコストが生じます。FXも外国のFX会社とは取引しにくく、多くの規制やコストがあることで、不満を感じる人もいるでしょう。

ダニ・ロドリック氏の指摘:ブログより

このグローバル経済の政治的トリレンマを解決するには、民主的な政治の範囲と世界市場の範囲を一致させるグローバルな連邦主義への移行⇒EUの実験を見てもかなり困難。

国家の状態を維持するならば、グローバル経済の統合レベルを引き下げて妥協すること。ブレトンウッズ体制も妥協の産物であり、それこそが成功を実現できる。

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