2017年の欧州選挙年、9月24日のドイツ総選挙は、オランダやフランスに比べて盛り上がりに欠けています。オランダ・フランスは、EU離脱派が勝てば、ユーロ相場の下落に繋がると、各国はもとよりFX・金融市場で大騒ぎでした。
しかし、今度のドイツ総選挙は、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の勝利が確実視されています。
一応、アイバルは、ドイツ社民党(SPD)のマーティン・シュルツ党首ながら、4選が確実なメルケル首相の対抗馬になりえません。おそらく、与党勝利に終わるでしょう。
そうなると、ユーロ高要因であり、ユーロ高で恩恵を受けるドイツ経済が少しダウン&トランプ政権には追い風となるシナリオが有力。
ドイツは、4年に一度の国政選挙であり、選挙に勝てば、EU統合に向けてドイツのバックアップを得ることになる。その反動で、イタリア・フランス・スペインなどで問題が起きる可能性ありですが。
メルケル首相は、左派の政策を横取り
メルケル首相率いるドイツは、経済的な好調を維持し、政府の収支も黒字化。ならば、政権交代する意味を見いだせないと言うところでしょう。一時、難民問題が問題となりましたが、そこも大きな争点とはなりえず。
なにしろ、ライバルとなるドイツ社民党(SPD)自身が、大連立で政権に加わっているために、メルケル首相率いる与党を攻撃しにくい。一応、2017年1月末に党首に選ばれたシュルツ氏は、貧富の格差解消を目指して、与党を攻撃したため、支持率をアップさせた時期がありました。しかし、その後はしりすぼみ。
メルケル首相の戦術は、SPDの政策を自身に取り込む事。もともと、現代の政治は、中道がメインで、保守も革新も選べる選択の振り幅は大きくありません。その中で、最低賃金の引き上げ・脱原発・温暖化問題解決などSPD側が主張していた政策をメルケル首相が実行してしまいました。
そうなると、SPD側も攻撃のしようがありません。逆に保守から左側に傾いたCDU側から保守層が離脱しようにも経済の好調が続いているために不満が少ないという形。フランスやイタリアのように、経済悪化・失業率が高まれば、極右や極左が台頭してくるのでしょう。メルケルドイツは、左派・リベラルに傾き対立を消しながら経済的な成功を達成しているため、負ける要素がありません。
◆ドイツ・イタリア・フランス・スペインの失業率比較
世界経済のネタ帳
しかし、ドイツが抱える問題は多く、EUのミライ、再生可能エネルギーへの大きな支援、移民問題、トルコとの対立など国内だけではくくれない問題が残っています。
EU制度強化の一案として提示されているのは「マルチ・スピード統合」である。欧州委員会は、今年3月にEUの将来について5つのシナリオを提示した(図表2)。このうち、ユンケルEU委員長や主要国首脳が推奨しているのが、統合をスピードアップするため、それができる国から進めるという「マルチ・スピード統合」という選択肢である。EU強化
FXにとっては、メルケル首相勝利後に、EUをどうしていくのか、EU内の格差にどのように対応していくのかなどが大事になってくるでしょう。
ドイツ在住の川口マーン氏の意見でもメルケル氏の勝利は確実。ただし、強すぎるドイツの反動は、今後、出てくる可能性を秘めています。
AfDの中には、実際にネオナチと考えの近い人もおり、それは党内でも問題視され、対策も練られている。ただ、極論者はSPDにもいれば、もちろんCDUにもいる。ただヴァイデル氏に限って言えば、彼女は非常に冷静だし、それほどの極論を打つわけでもない。
さらに言うなら、AfDの選挙公約は真っ当な保守の主張で、経済政策や難民政策は筋道が通っている。だから、政党、メディアが一体になって行っているAfD叩きは、ほとんどプロパガンダのようにも感じる。AfD(ドイツのための選択肢)
ユーロに対して反旗を翻しているドイツのための選択肢がどれだけ、票を伸ばすかが、ドイツ総選挙の見どころ。