日銀の長短金利操作付の金融緩和を前日銀審議委員の木内登英氏が批判しています。黒田日銀の進める異次元緩和に対して反対票を投じることの多かった木内氏。政策の問題点をエコノミスト誌で公開しており、FXにおいても大切な内容。特に、北朝鮮がミサイルを発射しても円高になる理由は分かりやすいと思います。
木内氏の語る北朝鮮リスクによる円高メカニズム
北朝鮮による核開発・ミサイル発射問題が起きて、円高・株安になるメカニズムも金融緩和の影響と説明。
長短金利操作によって、日銀が金利を0%程度に下げているため、地政学リスクが生じても金利は下がらない。欧米は金利が下がるために、海外との金利差縮小が起きて、円高・株安に動きやすいとの事。
◆日米10年債金利 2017年9月6日 FXネオ(GMOクリック証券)
- 7月10日は、日:0.08%、米:2.38%
- 9月6日現在は、日:0.00%、米:2.07%
- 日本は0.08%下がり、米国は0.31%下がりました。
◆米ドル/円の日足チャート FXネオ
地政学リスクの高まりで日米金利差が縮小し、円高トレンドに。木内氏の指摘通りに動いています。
このように、日銀の金融政策は経済を悪化させるリスクがあるといいます。
- 海外金利下落局面⇒日本の金利は下がらず、金利差が縮小し円高・株安に動きやすい
- 海外金利上昇局目⇒日本の金利は上がらず、金利差が拡大し円安・株高に動きやすい
それゆえに、金融市場をゆがめるデメリットがあり持続不可能!
異次元緩和の弊害
極端な金融緩和によっていくつかの弊害が出ています。
- 銀行は利ザヤ縮小によって利ザヤの大きいカードローンに注力:延滞や自己破産リスクの増加
- アパートローン増加により賃貸バブル
- 不動産融資の増加によって首都圏の不動産価格上昇
- 金利上昇に備えた融資を受けている人が不利になる(モラルハザードの誘因)
- 金融仲介機能の下落
- バブルの形成
- 実体経済への影響大
日銀の掲げる物価目標2%達成の重視は、金融システム安定化を阻害。物価よりも需給ギャップを見るべきで、2013年頃から需給ギャップは解消済み。
異次元緩和の将来シナリオ
国債買い入れは来年には限界が来るとのことで、国債の流動性低下から乱高下しやすい環境になる。日本国債の金利が乱高下することは、グローバルなリスク。
すでに、今、財政ファイナンス的な金融政策になっており、ヘリコプターマネーなどが本格的に議論されるようになれば、金利の急騰が起きる
世界的な低金利・低インフレのまま、次の景気後退が起きる。
新興国経済のリスクは高い。利回りの高いハイリスク商品に過剰なリスクを投資家が取る環境にあり、銀行ではなく、ノンバンクにリスクが溜まっているのがリーマンショック前との違い
木内氏の言に従えば、来年以降の経済は危うさが漂います。金利が乱高下すれば、当然、金利差が重要なファクターである為替も動きます。FXにとってはチャンス・リスクの大きな相場になる可能性があります。
そして、最も怖いのは、世界中で広がるノンバンク・シャドーバンク・仮想通貨など規制の弱い市場のリスク。