FRBは、2017年に後一回、利上げをする予定です。さらにバランスシートの縮小を行うつもり。雇用統計の失業率・雇用者数は問題ないものの実体経済は黄色信号が点滅との話がしばしば。
まず、エコノミスト誌の論壇から確認してみます。
米経済の成長は鈍化しているとの意見
●ダニエル・ブース氏(ダラス連銀のフィッシャー前総裁顧問)
- 小売業は負債に苦しんでおり、2月以降に8万人以上の雇用が失われた
- 中古車価格下落により新車販売は5カ月連続で前年を下回る
- 自動車ローンを抵当にした証券の損失は拡大
- クレジットカードの返済不能率は5月に過去4年で最高となる3.53%まで上昇。
- ミシガン大学消費者信頼感指数もさえず、不動産価格の下落傾向は、中小金融機関を破たんさせる
●ロン・インサナ氏(CNBCのコメンテーター)
- 自動車価格や原油価格の下落
- アマゾンドットコムのホールフーズマーケット買収で、小売業の価格競争が激化。
- 生鮮食品がデフレに陥るリスクが強い
●ニック・バンカー(民主党系のシンクタンク)
- 名目賃金の上昇はすでに天井
- 企業は賃金を上げても商品価格の引き上げをためらう
- 賃金が上昇してもインフレ率は上がっていない
- 失業率が低下すればインフレになるというフィリップス曲線理論は説得力がない
●ピムコのジョアキム・フェルズ顧問
- インフレ目標未達で利上げ&バランスシート縮小すれば、インフレ予想が低いレベルで固定化される
- 金融引締めは、金融危機時にFRBの打てる手を増やすだけ
- 低インフレで景気減速の引き金になりかねない
●セントルイス連銀のブラード総裁
- 経済は、低成長・低インフレ・低金利の状況から抜け出せない
- 失業率が3.5%になってもインフレ率はほとんどあがらないだろう
教科書的には、失業率が下がれば、労働者の賃金は上昇してインフレ率は上昇するのがフィリップス曲線の考え方。これが、現在世界には通用しにくくなっています。
これは、短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味する(インフレーションと失業のトレードオフ関係)。つまりフィリップス曲線とは、短期において「失業率を低下させようとすればインフレーションが発生」し、「インフレーションを抑制しようとすれば失業率が高くなる」ということを表した曲線である。フイリップス曲線
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エコノミスト誌以外からの意見もまとめておきます。
米5月雇用動態調査は、おおむね順調も24~54歳の男性労働参加率は前月通り88.4%と改善にブレーキ。
逆に労働参加率が上昇していた年齢層はバロンズ誌が指摘したように16~19歳、55歳以上の高齢層、特に70~74歳で顕著となります。生活する上でプラスαの所得が必要である現状が浮かび上がり、労働市場を表す数字がいくら堅調でも個人消費が起爆剤となって成長率を押し上げるとは想定しづらい状況が続きます。My Big Apple NY
個人消費の鈍化は、長期金利の上昇によるものとの指摘。
2017年、ドル安が続く理由をアメリカの実体経済に沿って説明する
長期金利が上がれば個人消費は鈍化する。長期金利は住宅ローンや自動車ローンの金利に影響し、金利が上がればアメリカ人はローンによって消費を増やすことが難しくなるからである。GDP速報でも伝えていた個人消費の減速傾向は、最新の4月の統計でも続いていることが確認出来る。
米国経済指標の推移:ザイFXで経済指標のグラフを確認してみると、2017年1月と現在の数字では、春にピークを打った可能性あり。
- 失業率は2017年1月:4.8%→6月:4.4% 順調
- コアCPI(消費者物価指数)1月:0.3%⇒6月:0.1% 鈍化
- 小売売上高1月:0.5%⇒6月:-0.2% 弱い
- 鉱工業生産1月:-0.3%⇒6月:0.4% やや強い
- ISM製造業景気指数1月56.0⇒6月:57.8 強い
- ミシガン大学消費者信頼感指数1月98.5⇒6月:93.1 弱まる?
- 住宅着工件数1月1236⇒5月:1.092 弱まる
CMEのFF金利先物は、2017年12月FOMCでの利上げ確率を52.7%と想定。
現状、FRBは12月利上げ路線を崩していません。夏から年末にかけて、FRBの動向に、FXは振り回されそうです。