5月7日のフランス大統領選挙決戦投票に進むのは、マクロン候補&ルペン候補に決まりました。結果的に事前予想通りであり、米国大統領選挙のような番狂わせもなくメディア予想の意味も問われずじまい。
このまま、何事もなければ、マクロン候補が大統領になるシナリオが現実的です。
この結果を受けて、為替市場・株価は上昇トレンドを描き、ユーロ売り・株売りに動いていた弱気筋は買い戻しの動きを見せています。
●各通貨ペアの日足チャート GMOクリック証券のFXネオ
ユーロ/ドルは1.8989まで上昇。米ドル/円も110円台に。週末の結果を受けて、FXのチャートは、朝から窓開けで上昇。
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反EUを巡るグローバリストとナショナリストの争い
今回の争点であるグローバリストとナショナリストの争いは、オランダ・フランスとナショナリストの敗北で幕を閉じそうです。とはいえ、この戦いはまだまだ続きそうですし、EU第二の大国フランスならではの事情もあるでしょう。
次はイタリアやスペインが大きなリスク。
4月23日の第一回投票結果:NHKBS「フランス大統領選」
- マクロン候補(親EU):23.86%、852万8585票
- ルペン候補(反EU):21.43%:765万8990票
- フィヨン候補(親EU):19.94%:712万6632票
- メランション候補(反EU):19.62%:701万1856票
●マクロン候補は左派でも右派でもない中道が売り
マクロン氏は、公務員や議員の削減で支出を減らし、企業の法人税減税などの政策を打ち出し都市部からの支持を集めています。国際関係は、EU・ユーロを守り、難民や移民にも寛容な姿勢の持ち主。
●ルペン候補は自国の利益を最優先
フランス最優先を旗印に、移民制限や治安強化を訴えます。国内産業保護・農業保護などを打ち出しており、反EU・ユーロの姿勢。
フランス国民の世論調査はユー離脱に反対
フランスの世論調査では、72%がユーロ圏離脱に反対しており、英国とは事情が違う点もマクロン候補の追い風でした。(2017年3月10日:エラベ調査)
今回の選挙結果で、反EUのルペン&メランション票を集めても親EUのマクロン&フィヨン票に及びません。
マクロン当選後に待ち受ける険しい道
大統領選挙が終われば、待ち受けるのは国民議会選挙。ここで、マクロン候補の率いる「前進!」は、左派・右派の既存政党と争うことになります。議会で過半数を取れれば良いのですが、議席数が足りなければ連立を組むなど難しい政権運営を迫られます。右派でも左派でもなく前に進むというポリシーを守るためには、単独過半数が欲しいところ。
マクロン大統領が強い支持基盤を獲得すれば、政治の世界において、右派・左派の色分けはさらに薄れていきます。日本の政治情勢を見てもほとんどの政党は中道であり、右も左も関係なくなっています。フランスにバランスをもたらす者=選ばれしマクロンは、予言を成就できるのでしょうか。5月と6月の選挙を見守りたいと思います。
- フランス大統領選挙 第2回投票(7日)
- フランス国民議会選挙(11日・18日)
ルペン候補の極右やメランション候補の極左という表現も以前からどうかと思っていました。
ドイツと周辺国の分裂そしてECBの選択
政治問題が落ちつけば、大きな問題として出てくるのがECBのテーパリングやドイツの強さ。景気が過熱するドイツと弱い周辺国の違いがユーロの持つ構造的問題。金融政策だけが共通で財政政策は各国によりバラバラでは難しいことが浮き彫りになっています。
4月14日に米財務省から公表された為替政策報告書もこの点に言及している。市場では為替操作国認定の有無ばかりが注目されたが、ユーロ圏に対する評価の中で「経済パフォーマンスの質に照らして加盟国間で著しい分散(considerable dispersion)が見られている」との記述があった。ロイター
ユーロ安及びそれがドイツに恩恵をもたらすことはドイツですら認めています。
●欧州各国の失業率
2000年代の安定期は、EU統合への明るい未来が見えていました。リーマンショックからの世界経済危機が、この流れを根底から変えてしまったことが失業率のグラフを見ると理解できるでしょう。さらに、加盟各国間の著しい格差にびっくりする方も多いのでは。
ドイツの失業率だけを見れば、ECBは緩和を終了しテーパリングできる状態。しかし、スペイン・イタリア・ギリシャなどは、ECBの緩和によって延命している状態ですから、緩和終了のダメージに耐えられないことになります。すると、ドイツだけ景気が過熱することになり、不都合な事態が生じてくるリスクがあります。