2009年に発覚したギリシャ債務危機。これ、いまだに終わる気配を見せません。またもや情勢が怪しくなってきました。
2017年7月に、約70億ユーロの債務返済を控えている中、EUとIMFが対立を続けています。単一通貨ユーロを使う以上、ドイツ有利周辺国不利は変わらないのでしょう。
◆IMF・EU・ギリシャの三つ巴
- IMF:ギリシャが構造改革を実施。EU各国が債務削減を行うこと
- EU(ドイツ):IMFの協力を要請(協力がなければドイツ議会は納得しない)。債務削減は受け入れがたい。
- ギリシャ:緊縮財政はもう限界。総選挙及び政権投げ出しの可能性あり
ドイツのショイブレ首相は、ギリシャは経済改革を実施できなければユーロを脱退すべきとも発言。(グレグジット)一応、この話は否定しており、改革を行えば問題はないと言い続けています。⇒その改革ができなくてずっと苦しんでいるんですけどね。
IMF側は、ギリシャの財政目標達成のためには、追加で財政緊縮・債務負担の削減が必要としています。
2月20日のユーロ圏財務相会合では、次回融資に向けた協議を行うことまで、ようやく話を進めた段階。
●ユーロ/ドルの週足チャート:GMOクリック証券のFXネオ
2017年3月1日
FXサイトの目次
今後のギリシャに関するシナリオ
1.ギリシャのユーロ離脱(グレグジット)
ユーロ最大の問題点は、ドイツにとって弱く、ギリシャをはじめ他国には強い通貨であるという点。みずほ銀行の唐鎌大輔氏の記事が良くまとまっていますのでリンクしておきます。
1月末には、トランプ米大統領が新設した国家通商会議のナバロ委員長が英紙に対し、ユーロは「暗黙のドイツマルク」のような存在であるにもかかわらず、過小評価されていることで、ドイツが有利に貿易を進めていると批判したことが話題になった。
こうした批判にメルケル首相やショイブレ財務相は反論しているものの、反論のポイントは「欧州の金融政策はドイツが決めているものではない」という点であって、「通貨安で黒字を荒稼ぎしている」という点については、むしろ同意している。ロイター
ようやく、ドイツの政治家たちもこの点を認め始めました。しかし、それはECBの決めることであり、我々の責任ではないと言うことを忘れていません。
さらに、ドイツ国内では、ドイツの黒字・強さは、自分達の構造改革と努力のおかげであり、通貨安のせいではにという論が根強く、それゆえにギリシャを支援しようという声は弱いまま。
これを解決するには、統一した金融・財政政策。つまり、実質的にユーロでの国境を無くすに等しい政策が必要であり、そこに至る道は困難を極めます。
そこで、ギリシャは、ユーロを離脱して独自通貨を発行する道を選ぶ可能性があります。
この時には、ユーロ建てのギリシャ債券がデフォルトする。スペイン・ポルトガルなどの国債危機(債券が売られて金利上昇)が引き起こされるでしょう。金融危機の再来です。
ギリシャにとっては、将来的な通貨安による経済回復。世界とEUにとってもギリシャの切り離しが出来る面で、メリットは大きい施策です。デメリットは、切り替え時のショックが大きすぎること。
この道を選ぶには、ギリシャ国内での選挙・民意の反映が必要。ただ、オランダ・フランスの選挙で、ユーロ離脱派が勝利すれば、ドミノ倒しでこのシナリオが実現するかもしれません。
ユーロ/円及びユーロ/ドルの長期年足チャート:FXで人気の通貨ペアユーロ/円。
GMOクリック証券のFXネオ
2.ギリシャの債務を大幅削減
EUが保有しているギリシャ債務を大幅削減すること。これが実現すれば、IMFもギリシャ支援に前向きになります。
ギリシャにとってもあり難い話で、債務の削減額次第では、当面、ギリシャ危機は避けられるでしょう。
しかし、このシナリオでは、ドイツ国民を納得させることはムズカシイと思います。オランダ・フランス・ドイツと2017年は選挙が続きますから、その最中に、ギリシャ債務を放棄、間接的な損失を負うなんてことを実施すれば、ドイツ与党の敗北必至です。
3.ギリシャが更なる緊縮財政を実施
IMF・EUが納得するレベルの緊縮財政を実施。
この場合、納得しないのがギリシャ国民。あっさりと受け入れれば、政権退陣・反対派が政権奪取となって、混乱が長引くかもしれません。
4.IMF・EU・ギリシャの妥協案
最も可能性の高い案は、それぞれが妥協すること。
IMFは、ギリシャに対する緊縮財政を緩める。EUは債務削減の小幅同意。ギリシャは決まった約束をしっかりと実行する。
その上で、IMF&EUは、融資を実行する。
問題の先送りになりますが、若干のブレがある中で、もっとも実現性が高いシナリオです。この場合、リスクが減少し、株価・ユーロなどの上昇に繋がりやすい。
その上で、ギリシャやEUの景気回復・世界経済の順調な成長があれば、各国の反応も変わってくるでしょう。世界経済が悪化してゆくと、1~3のシナリオが再度浮上します。
IMFのトムセン欧州局長&オブストフェルド首席エコノミストの意見
この記事を巡り、関係各国・組織は混乱を隠せません。
- ユーロ圏は、ギリシャに2018年の基礎的財政収支の黒字を対GDP比率で3.5%とするように要請。
- この比率は誤りで、1.5%で十分。
- ユーロ圏の要請で、ギリシャは緊縮財政政策を余儀なくされて、成長を阻害する
- もし、ギリシャが3.5%を達成しても、持続可能ではない。
- ギリシャ政府は公的サービスや保健医療を切り詰めるよりも所得税制度と年金制度の改革を実施すべき
- ギリシャは、家計の半数以上が所得税の支払を免除されている。ユーロ加盟国平均は8%。
- ギリシャはGDPの11%を年金に支出。ユーロ加盟国平均は2.25%
- ギリシャは失業保険支給制度が整備されていない。
ギリシャと日本の基礎的財政収支(対GDP比率)
- 財政収支に対し、純利払い費を除いたものである。プライマリーバランスと呼ばれており、当年の必要経費を税収等でどれだけ賄えるのかを表している。
現在のギリシャは、非常に頑張って黒字化しています。
緊縮財政をしていますから、GDP成長率や失業率はなかなか改善せず。通貨はユーロですから通貨安からの経済回復も見込めません。