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  1. 英ポンドとイギリス
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英国メイ首相は、EU単一市場から離れて「ハードブレグジット」となるシナリオを選択

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英国が、EU離脱を国民投票で決めてから約半年が経過しました。ブレグジットは、ソフト路線ではなくハード路線に向いています。英国はEU単一市場から抜け、主権をEUから自国に取り戻す方向=国民投票の結果がそうでしたから、まず、その方向に進むでしょう。

英ポンドが今後、どのような動きを見せるのか不確定な部分が多すぎます。FXで、英ポンドは動きの激しさで有名な通貨でした。2017年以降も、荒い値動きが起きると共に、ユーロとの連動性が弱まるのではと思います。

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英ポンドの値動き

●GMOクリック証券のFXネオ:英ポンド/円&ユーロ/英ポンドのチャート

英国のメイ首相の演説:2017年1月17日

2017年1月17日にEU離脱についての方針を明らかにしました。

  • 欧州だけでなく、世界的なイギリスになるという選択を選び、EUを離れていく選択をした
  • EUの政治体制はイギリスに合わなかった。EUを離脱しても欧州の一部であることは変わらない
  • EUの単一市場に止まることは計画していない
  • 大胆・野心・包括的なEUとの自由貿易協定を結び、EUへの可能な限りのアクセスを目指す
  • EUはパートナーで、同盟関係を結ぶ
  • 英国は、EUを離脱し、ベストな合意を目指す
  • 英国は、移民のコントロールを取り戻す。自分達の移民についての規則を作る
  • 合意案は議会で採決する。
  • 国民投票後の経済は、予想より良い。
  • 議会は賛成すると思うし、民主的な立場を尊重する
  • ビジネス危機や安定性危機は望まない
  • 破壊的な危機の回避を求める

メイ首相は、EEA(欧州経済領域)に加盟し、EU単一市場へのアクセスを維持する形=ソフトブレグジットは明確に否定しました。EEAに加盟した場合、人・モノ・サービス・資本などを自由に移動できる。そもそもブレグジットで問題になっていた移民のルールは自分達で決めるということができなくなります。

EEAは1994年、EUの前身である欧州共同体(EC)とノルウェーなどで成る欧州自由貿易連合(EFTA)の市場(スイスを除く)をまとめる形で発足した。欧州で統一自由貿易圏をつくり、世界での地位を維持・向上させる狙いがあった。加盟国はEU市場にモノ、サービス、資本を自由に移動できるほか、教育、環境、観光、消費者保護など広い分野で協力する。EUとEFTAによる合議などで意思決定するが、実質は広くEU法への準拠が求められる。一定額の拠出金も支払う必要がある。 EUと同様に人の移動の自由も認めている。EEA:日経新聞

欧州は、様々な条約・機構で枠組みを作っています。

欧州の主要な枠組み

欧州の枠組み

CoE (Council of Europe):欧州評議会(47)
CIS (Commonwealth of Independent States):独立国家共同体(11)
CSTO (Collective Security Treaty Organization) :集団安全保障機構(7)
EEA (European Economic Area):欧州経済領域(30)
EFTA (European Free Trade Association):欧州自由貿易連合(4)
EU (European Union):欧州連合(27)
NATO (North Atlantic Treaty Organization):北大西洋条約機構(28)
OSCE (Organization for Security and Co-operation in Europe):欧州安全保障協力機構 (57)

出典:外務省

まず、ハードブレグジットの形で、各国との自由貿易協定を結ぶ方針。そして、メイ首相が掲げたのが次にあげる12の優先事項。その内容は以下の通りです。

(1)交渉の確実性確保

EUと離脱交渉を進めるにあたり、産業界や公共部門をはじめ全ての人々にできる限りの確実性を提供することが重要だ。EU法を英国法に置き換え、離脱前と同様のルールや法律が適用されるようにしていく。EU離脱の最終決定は上下両院の承認のもと行われることを改めて確認する。

(2)英国法の独立

法の支配を取り戻し、EU司法裁判所の英国での裁判権を終わらせる。EU離脱で我々の法律がウエストミンスター、エディンバラ、カーディフ、ベルファストで作られるようになる。司法判断はルクセンブルク(EU司法裁判所)ではなく我が国でなされる。

(3)地域連携の強化

強い英国を築くにあたり、国を構成する4地域の貴重な連携を強化しなければならない。開かれた通商国家として成功するため、未来に向けて手を携える必要がある。自治議会選を控える北アイルランドも同じ理念を共有することを望む。

(4)往来自由の維持

EUを離脱しても(EU加盟国の)アイルランドと地続きの境界で接していることを忘れてはならない。移民管理を進めつつ、アイルランドとの往来の自由を維持することは離脱交渉にあたり優先事項となる。

(5)移民流入の管理

欧州からの移民流入を管理できるようにしていく。就業や勉学の地として有能な人材に開かれ続けることは大切だが、国益に沿った移民管理の下で適切に行われなければならない。EUからの移民数を制限していく。

(6)市民の権利保障

英国に現在居住するEU市民と、EUに住んでいる英国民の権利は保障されなければならない。

(7)労働者の権利の保護

公正な国家である英国として、労働者の権利を擁護し高めていくことが必要だ。EU法を国内法に置き換え、労働者の権利は守る。労働市場の変化に対応して法も変えなければならない。上場企業では労働者の声が経営に反映されるような仕組みにする。

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(8)欧州市場との自由貿易

英国は世界でも最も自由貿易を主張している国だ。EUと野心に満ちた貿易協定の締結を目指す。その貿易協定においては、モノやサービスの移動が最大限自由になるべきだ。しかし、はっきりさせておきたいが、英国はEUの単一市場のメンバーとして残ることは目指さない。

EU加盟国の首脳は何度も、EUのメンバーであるということは、モノや資本、サービス、人の「4つの(移動の)自由」を受け入れることだと言っている。単一市場に残れば、EUのルールに従わないといけないので、EU司法裁判所の判断に依存する必要がある。それではEUを離脱することにならない。

単一市場に残るのではなく、新たな包括的で野心的かつ大胆な自由貿易協定(FTA)をつくり、その市場へのアクセスを追い求める。金融サービスや自動車といった特定の産業ではこれまでの共通ルールを取り入れるかもしれない。可能な限り単一市場への自由なアクセスを求める。

我々はもう単一市場のメンバーではないので、EU予算の負担金は払わなくてよい。どういった(EUの)プログラムに参加するかはその都度決めていく。

(9)EU域外国との新たな貿易協定

ただ、我々の関心はEUとの自由貿易だけではない。EU域外国との自由貿易も求めていく。EUも重要だが、英国は域外の急速に成長している輸出市場とも取引が必要だ。英国国内総生産(GDP)における貿易額は低迷している。貿易を拡大しないといけない。だからこそ、私は初めて、国際貿易省を設立した。

私たちはもっと世界中と自由な貿易を拡大したい。中国や湾岸諸国はすでに英国との貿易協定に関心を示している。オーストラリア、インド、ニュージーランドとの協議も始めた。トランプ次期米大統領は英国は米国との貿易の「列の最後」ではなく、前線にいると言っている。

(10)科学や技術革新にとっての最適地

グローバルな英国は将来を見据える国だ。世界で科学や技術革新において最も優れた位置にいる。英国の特徴は、世界最高レベルの大学によって、広範な学術や科学レベルが保たれていることだ。科学・学術分野でもEUと協力できる協定を歓迎する。

(11)対テロ・犯罪でのEUとの連携

引き続き犯罪やテロに対して、外交などでEUと協力したい。我々は皆テロなどの脅威に直面しており、共通の価値や関心を持っている。もっと協力を深めて対応すべきだと考えている。司法や情報共有といった分野でEUと具体的な協定を結びたい。

(12)円滑で秩序だったEU離脱

過去にも言ったが、現在の関係から、新たなパートナーシップに移行する中、ビジネスや安定の脅威になることがあってはならない。まず条約で定められた2年間の離脱交渉期間の間に新たな英EU関係の形を定めた上で、国境や輸出入の管理など実際の新制度への移行は段階的に行いたい。英国・EUの双方にとって望ましく、そうすれば企業も十分準備できる。

出典:日経新聞

いよいよ、2017年3月末までに、正式な離脱交渉を開始する予定です。基本的な交渉期間は、2年間。

ここで、心配されることが、「議会での採決」。議会での採決が反対されて、どの路線で進むのか決断できなくなるリスクがあります。

そして、ハードブレグジットと言えども、様々な形がありますから、どのような協定を結べるかで英国経済と英ポンドの行方は大きく変化しますね。

ブレグジットに関するいくつかのシナリオ

英国が目指すのは、ソフトではなく、ハード路線であることが明らかになりましたが、どの程度のシナリオを想定しているのでしょうか。JETROが英財務相や政府の資料をまとめていますので、簡単にご紹介しておきます。

1.ノルウェーモデル:EEAに加盟

EU単一市場へのアクセスは維持。EU規制・人の移動の自由・EUへの財政貢献が必要。

ノルウェーは、政治的には独立し、貿易・経済の観点からEUとの関係を重視しており、EU法を受け入れている。2014年までに施行された法令の約75%はEU法。

2.スイスモデル:EUと二国間協定を締結

EU単一市場へのアクセスは制限。EU法・人の移動の自由・EUへの財政的貢献をしないと単一市場へのアクセスは許可されない

EUとの二国間協定で、様々な関税・協力関係を構築。

スイスは地方分権の進んだ国であり、現在のEUが進める中央集権型は肌に合わない

3.トルコモデル:EUと二国間協定・関税同盟

関税や数量規制・制限を廃止。対外共通関税や特恵的協定でEUと連携している。EUとの間で政治・人・財政ではかなり離れた状態。

4.WTOモデル:ロシア・ブラジル

英国のアクセスは弱く、関税率・貿易障壁で不利な点が多い。この道を選択する可能性はほとんどない。

EUとの間に特別な協定を結ばず、WTOのルールに則る。EUとの間に義務はなくなるが、各国との貿易関係は不利。

英国は、EU及びその特恵的貿易相手国58か国とFTAを締結している。EUを離脱すれば、それらの国々と、交渉をやり直す必要性がある。

この交渉を進めるのは複雑で、場合によっては、現在の交易条件より悪化する可能性がある。

 

参考データや使用

 

英国は、これから、EUを頼らずに、他国と貿易条件を結ぶ必要があります。この条件が悪化して、高い関税率を課されたり、輸出入に制限が加わることがハードブレグジットのリスク。サービス業や金融業は、不利が大きくなるのではと予想されています。

FXで英ポンドを取引する時は、レバレッジを低くしてリスク管理をしないと危険です。議会での採決やEUとの交渉時などのビッグイベント時は、スプレッドの広がりや取引制限の可能性もありますからね。

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