安倍晋三首相は、2016年6月1日に、消費税増税延期を正式発表。2019年10月へと後倒しになりました。通常国会閉会後の記者会見で、第二次補正予算を秋に編成すること、6月22日公示・7月10日投票の参院選で国民の信任を問うと話しています。
米ドル/円相場は、記者会見後にドル安円高が進行。特に110.50円割れからの急落には、多くのFX・ファンドのストップロスが処分される大きな値動き。
ただし、消費税増税延期の影響よりも英国のEU離脱問題や円ロングに傾いた為替相場の攻防という面が大きいとも考えられます。
消費税増税延期を正式決定後の米ドル/円相場
伊勢志摩サミットでリーマンショック級のリスクが起きる可能性を説明後、消費税増税延期を表明するのではとのニュースが5月27日に初登場。
●米ドル/円の30分足チャート:DMMFX 2016年6月2日11時
為替相場は当初、大きな反応はせず。FRBのイエレン議長が早期利上げを講演(27日)で示唆したことで円安に動く。
週末にかけて消費税増税延期のニュースが相次ぎ、月曜日の為替相場は円安で反応。
5月31日に英国の世論調査でEU離脱派優勢とのニュースから円高へと流れが変わる。米ドル/円は6月1日に110.50円を割り込んだことで、急激な円高進行。積みあがっていた円ロングポジションを狙ってのロンドン勢の売り込み。
日銀の追加緩和については必要性が弱まったとの意見もファンドやFXアナリストから出ています。日銀の黒田総裁は、基礎的財政収支の黒字化に対して懸念を示すに止まり、消費税増税延期については政府・国会に任せているとの話。
消費税増税再延期は、海外投資家にアベノミクス効果を疑問視させてリスクオフに向かわせる影響を与えている。日本の財政に対する懸念も当然出てくるでしょう。今後、日本の経済指標やアベノミクスによる規制緩和・財政出動・参議院選挙などが為替相場の材料として出てくると思います。
安倍晋三首相の消費税増税延期についての記者会見
- 通常国会では、一億総活躍社会へと踏み出せる未来へと挑戦する国会になった。
- 新興国・途上国経済は落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクにさらされている
- 伊勢志摩サミットでの合意を実行に移す
- デフレへと戻るリスクがあるためアベノミクスを加速し構造改革を断行する
- TPPの早期発効を目指す
- 新規低利貸付制度で21世紀のインフラを整備
- リニア中央新幹線・整備新幹線を建設加速して地方創生回廊を作り上げる
- 保育所や介護施設の整備で、一億総活躍社会を進める
- 最大のチャレンジは労働制度改革
- 同一労働同一賃金を実現し、均等待遇を確保、長時間労働の慣行を断ち切る
- 熊本地震の復興対策を実施
- 人工知能、ロボット、技術革新を日本から起こす
- 雇用は全般的に良くなっている
- アベノミクスは順調に結果を出せている
- 中国など新興国経済は投資の落ち込みなどで陰りが見える。
- 現在、リーマンショック級の危機は起きていない。起きるリスクがある。
- リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落
- 世界的な需要低迷・成長の減速を懸念
- 経済の専門家の多くが、需要低迷による今年、来年の景気悪化を見込んでいる
- 伊勢志摩サミットでは、危機回避のために、適時、全ての政策対応を行うことで合意
- 2009年もプラス4%の経済成長を予測していたが、実際はマイナス成長になった。
- G7による共通のリスク認識の中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべき
- 財政再建及び社会保障を考えると、2020年度の財政健全化目標は維持
- ぎりぎりのタイミングが30カ月延期の2019年10月で、軽減税率も導入
- 3年間のアベノミクスで税収は21兆円増加
- さらにアベノミクスで税収をアップさせて、2020年度のプライマリーバランス黒字化を目指す
- 消費税増税の再延期は、約束してきたことと異なる判断
- 消費税増税の延期は新しい判断であり、参議院選挙で国民の信を問いたい。連立与党で改選議席の過半数獲得が目標
- 秋の臨時国会でアベノミクスを加速させていく
安倍内閣総理大臣記者会見:首相官邸ウェブサイトより
2020年度の財政健全化=プライマリーバランスの黒字化達成のためにも実質成長率を安定して2%に乗せることが内閣府の試算で必須。逆に言えば消費税増税よりも実質成長率向上が必要だということ。
下記は内閣府による試算。赤線の経済再生ケースシナリオに進まないと日本財政の回復は難しい。
2020年の財政黒字化に必要なこと:財務官僚高田英樹氏の意見
消費税増税は、2019年10月に決まりました。そして、安倍晋三首相の自民党総裁としての人気は2018年9月まで。これは、連続で2期6年までとなっている自民党総裁としての規定であり、総理大臣としての任期ではありません。そのため、総裁任期を3期9年に延長すればという話が浮上しています。
3期に延長できれば、2021年9月まで在任できて、消費税増税と2020年の東京五輪を安倍首相で乗り切り、さらに憲法改正まで踏み込めるというのが任期延長の思惑。
OECDは、消費税増税延期による公的債務増大・財政不安がリスクだと指摘しています。
日本については「前例なき高水準の公的債務が主要リスクのひとつ」だと指摘した。財政健全化目標達成のために消費税や所得税など様々な税率を引き上げて歳入増を実行に移さない限り、財政持続可能性に関する信認が失われ、世界経済に大きく波及するとの見方を示した。ロイター
これから、参議院選挙で米ドル/円の動きも出てくるでしょうから、FXをはじめたい方は、しっかりと学んでからスタートしてください。中長期的な事を考えると外貨投資を勉強しておくのはプラスになりますよ。