2016年の為替相場は、米国利上げの影響や原油相場の動向が影響を与えそうです。中国経済を筆頭に世界経済が減速している面があり、リスク回避の円高が生じるか。日米金利差による米ドル高が起きるか。
2016年の米ドル/円相場は予測しにくい展開になりそうです。FXトレードの上では、上下どちらに動いても対処できるようにしておきましょう。まだ、テクニカル分析を利用していない方は、何かお好きな分析方法を勉強するチャンスです。トレンドライン&MACDを使った分析などもいいですよ。
2016年の米ドル/円相場予測
米国の利上げは緩やかなペースで続きそうで、大きな変化はないと思われます。
景気サイクル的に、2016年終りから2017年にかけて景気後退の可能性がある米国市場の中、金融引き締め=利上げが何回行われるかは大変興味深い話題です。ジム・ロジャーズなど著名投資家の中も景気後退や利上げ回数を気にしている向きは多く、3~4回目の利上げ辺りが株価下落やリスクオフに繋がる危険な時期であろうと見られています。
FRBが利上げを行い、日銀やECBが追加緩和を行うと、単純には米ドル高に動き、ユーロ安や円安に動く。そうなると、ただでさえ、景気腰折れ懸念を気にしている米国が持たない可能性もありえる。それ以外にも原油相場や難民問題などが山積みの中、リスクオフの動きが年に何回か起きると思います。
米ドル/円相場に影響する事項
- 日本の経常収支:経常黒字が拡大していけばドル安円高に
- 米国経済の景気ダウン:利上げに株価や景気は耐えられるか
- 原油相場の動向:最大のリスク要因。世界経済のルールが変わるか
- 米国利上げの推移:緩やかなペース
- 日米金融政策の差:米国利上げ、日本緩和策とドル高要因
- 日銀の追加緩和:いつどのように実施
- 消費税増税の有無:弱い景気の中、本当に増税できる
- 日米の労働コスト上昇:米国だけ上昇し、日本が上昇しないなどの乖離が出ると米国景気ダウン
2012年以降、続いていた円安トレンドは、「アベノミクスによる金融緩和」「貿易赤字の拡大」により、継続していた。ところが経常収支が黒字化していることで、円安要因が一つ消えていることに注目。
時事通信:経常収支の推移
となると、単純に日米金融政策だけで、ドル高円安になるとは言い難いところ。
ドル高円安シナリオ:米国が、利上げをこなしても減速せずに、成長していく場合。利上げによる日米金利差拡大を素直に受け止めて、ドル高進行。日銀が大量に国債買い入れを行うなど追加緩和を行った場合もその動きを助ける。
ドル安円高シナリオ:米国経済が失速して、利上げ延期や利下げ。この場合、キャリートレードの巻き戻しなどを含めて大きく為替相場がリスクオフの円高に動く可能性がある。
●米ドル/円の週足チャート:DMMFX
長期的な動きをフィボナッチリトレースメントで確認すると、125.856をトップに押し目がある場合、23.6%の114.010円が目安。2015年の年間最安値115.85円は、年間変動という点では十分に視野にはいる。
実際、12月29日現在も120円強で動いているため5円程の円高は考えられる水準。
円安シナリオの場合は、125円~126円が当面の想定水準。それを超えると2001年~2002年の130円前後が視野に入ってくる。
●ユーロ/ドルの週足チャート
レンジ相場に入っているユーロ/ドル。ECBの緩和傾向は明瞭かつ、欧州域内の景気差・インフレ・労働環境を調整するはずの変動為替相場を失っているユーロ。ドイツが正しく、他国が間違っているという政策を是正しない限り、危機は続くのではないか。
ドル高は相対的な問題で、ドル高=円安とは限りません。ドル高ユーロ安である可能性もあることをFXトレーダーはお忘れなく。
その他、様々な予測シナリオ
こんな懸念がありますということをお知らせしておきます。
- 中国経済がソフトランディングに成功して、再び商品市況の購買に力を入れる
- ISISが拡大もしくは分散し、テロの脅威が世界中に吹き荒れる
- ついにユーロが復活し、ドイツと周辺諸国の協調体制ができあがる
- ドイツ独り勝ちの事態に変化なく、ユーロから離脱する国の話が現実化する
- 南シナ海で米中が武力衝突する
- ドル高=通貨安となった各国の経済が底入れし、世界的に景気が回復する
- 労働コスト上昇がインフレを呼ぶ
2016年の為替・経済予測サイトおよびページ
- 2016年サクソバンクの大胆予測:予測の大胆さはデンマークのサクソバンクが一番
- マネックス証券為替予測:プロフェッショナル達の予測
- アベノミクス初の円高か?:バンカメメリルの山田修輔氏
- 円高ロジックの落とし穴:政井貴子氏:新生銀行
- 2016年は110円も:佐々木融氏:JPモルガン
プロの予測も115円~130円と幅があります。それは、今までの相場と違い、上下どちらに米ドル/円が動くか迷いがある証拠。中長期予測をピタリと当てるのは難しいので、最初からいくつかシナリオを考えておきましょう。