2007年のサブプライムローンから始まった金融危機は、市場や中央銀行に大きな影響を与えました。この時の暴落や機能停止局面では多くの投資家が損失を被っています。
そのため、FXを含めた金融市場は、「リスクオン」と「リスクオフ」という言葉が広まり、毎日のように市場ニュース解説に登場中。
●GMOクリック証券のFX比較月足チャート(2014年3月28日)
以前は、避難通貨、安全通貨(資産)と言う言い方でこのキーワードを使うようになったのは金融危機以降。
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臆病な投資家が増加しリスクオンとリスクオフ取引が流行
金融危機が起きて、市場参加者(投資家)は安全志向を強めて高い利益を求めるよりも資産を減らさないことを重視しています。
政治・経済・市場で少しでも異変があると、ただちに収益資産から安全資産へとお金を振り向けます。この動きをリスクオン・オフと呼びます。
リスクオン(リスク選好)
市場参加者がリスクを取る局面。安全資産を売りリスク資産を買います。
具体的には株式や格付けの低い債券。通貨では高金利通貨、資源国通貨、新興国通貨など。
リスクオフ(リスク回避)
市場参加者がリスクを避ける局面。リスク資産を売り安全資産を買います。
国債や格付けの高い債券を買います。通貨では避難通貨として米ドル、日本円、スイスフランなど。
リスクオン・オフ時に安全と思われる資産
その時々に応じて「安全と思われる資産や通貨」は変わります。ここはFXトレーダーも要注意です。
通貨の安全危険度順は変わる。
危険=新興国通貨:豪ドル:ユーロ:米ドル:日本円:スイスフラン=安全
例えば、2014年に勃発したロシアウクライナ問題は、ユーロへの影響が強くこの問題についてはユーロのリスクは相対的に増加します。一方、北朝鮮問題だと日本円への影響が大きいことから、日本円のリスクは増加。
つまり、安全と考えられている通貨や資産は常に一定ではなく、局面により変わるということ。国債や株式も同じ。
ポジションを決済する動きが起きる
リスクオン・オフのセオリーは、状況により変化します。いつもリスクオフで円高に進むと覚えてはいけません。新規エントリーよりも既存ポジションの決済を行う動きが早いということ。そのためリスクオフ時の状況として下記を記憶しておきましょう。
インターネットはじめ通信回線の進化がこの動きを助長。
- 危険が起きた事件・場所との関連度が高い通貨や資産は売られる
- 低利で調達するキャリートレードやレバレッジ資産は売られやすい
- 未決済ポジションが多い通貨・資産は売られる。
- リスクオフ時は、直近のトレンドと逆に動きやすい
- 対外依存度の高い国の通貨や株は売り(先進国買い新興国売り)
具体的な事例
このリスクオン・オフを予想するには、自分が何千億円の資産を運用しているアラブの大富豪かファンドマネージャーだと思ってください。巨額のお金を少しでも増やしたい・減らしたくないと思うとリスクやリターンに積極的になる時期・ならない時期。また、世界で起きている出来事に対してどこの国がリスクを負っているのか安全なのか分かりやすくなります。
●中国経済の鈍化やマレーシア航空機の消息不明がリスクオフに
未明にリスクオフモードが強まった。8日に発表された2月の中国の輸出が予想外の大幅減となったことやマレーシアの航空機が消息を絶った問題が警戒され、円やスイスフランが買われた。
2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を上回る内容となったことでいったんはリスクオンと流れとなり、市場はドル買い/円売りに傾いた。2014年3月10日ロイター
●2013年の春から始まった米国量的緩和縮小の話は、新興国リスクを大きく表面に炙り出して日本円が買われる局面となった。
スワップポイント狙いで高金利通貨を保有している人にとって市場がリスクオフに傾くと資産が目減りする傾向。
リスクオン・オフが重要になった理由
インターネットをはじめとしたIT革命は、金融取引に大きな変化を与えました。それがリスクオンオフが重要になった理由です。昔の金融取引やFXは、電話ゆえに制約が非常に大きい取引。
- 売買注文を出せる時間に制限
- 売買手数料やスプレッドといった取引コストが大きい
- 注文変更やキャンセルしにくい
- 情報の入手スピードと範囲が広がった
このため、世界中の金融商品や資産がそれぞれ繋がりを持つとともに、資産の流動性が高くなったのです。つまり、昔は、ある資産が危険だと思っても取引コストや詳細な情報を待って動かなかった投資家(お金)達が、瞬時に取引できるようになったのです。
FXを見てもスプレッドが狭くすることで取引量が増えたように、世界中で売買の制約が下がったため、リスクに対する反応が早くなり、あわせて資産間の連動度合いが上がったことがリスクオン・オフ取引注目の理由。