FRBは2018年6月のFOMCで追加利上げを決定。そろそろ低金利や金融緩和と言えない水準に近づき、景気後退や円高トレンド再開がいつ来るかを予想しなければいけない時期です。
2018年中の利上げ回数は、以前の3回から4回に引き上げられて、FX・株式市場には波乱要因が増えてきました。
米国の利上げ回数の予想
- 2018年:3回⇒4回
- 2019年:3回
- 2020年:1回
FRBの利上げサイクルは、2020年までの利上げが予想されています。ただし、景気後退が2019年から2020年にかけて起きると考えられており、順調に利上げを継続できるかは分かりません。
インフレ加速と中立金利
FOMC参加者による金利見通しで(ドットチャート)、Ffレートの長期見通しは2.875%。パウエルFRB議長も中立金利として2.9%を示しており、このレベルを超えれば、景気が冷える可能性があります。
もちろん、この中立金利自体が、引き上げられる可能性もあります。
2018年6月の利上げで1.75-2.0%に上げたため、後1%の利上げ(0.25%の利上げ4回分)で、中立金利に達します。2019年中には、この水準に達すると予想でき、FX・株式など金融市場は、金利上昇スピードにおびえながら、動くことになるでしょう。
インフレ率の上昇
FRBは、インフレ率の目標を2.0%としています。6月のFOMCは、5月に続き、2%に近付いたと表現。個人消費支出価格指数の見通しを2018~2020年にかけて2.1%としており、目標達成に自信を持っています。失業率も2018年5月の数字で3.8%まで下がっており、雇用と物価の二兎を追いかけて捉えかけている状態。
これまでのデフレ退治による金融緩和から、インフレ率警戒へと物価の流れは変化しています。
1990年以降の米国利上げと株価下落
1990年以降に、米国は3回、利上げを実施。では、利上げ局面はどれくらいの期間続いたのでしょうか。
- 1994年2月~1995年2月:3%⇒6%
- 1999年6月~2000年5月:4.75%⇒6.50%
- 2004年6月~2006年6月:1.00%⇒5.25%
(1)1990年代半ばは、あのグリーンスパン議長が、金融政策のかじ取りをしていました。このときは、利上げしても景気低迷や米国株式市場の暴落はなく、米国だけを見れば、成功した利上げと言えるでしょう。ただし、アジア通貨危機やロシア危機・LTCM破たんなどが生じて、金利は引き下げられました。
(2)次は、2000年を挟んで、ITバブル時代。約1年間をかけて利上げを行なったところ、2000年9月ごろからITバブルが崩壊し始めました。そして、2001年1月から利下げが開始されたのです。
(3)2004年からの利上げは、1.00%から5.25%と結果的に大幅な利下げを行なうことになりました。それでも、この利上げペースの遅さが、サブプライムなど不動産価格の上昇を呼んで、リーマンショックを引き起こしたと批判する向きも。
過去の例を見ても。利上げは、いつか株式市場の暴落を導く可能性が高いことが分かります。しかし、グリーンスパン議長が、根拠なき熱狂と市場を冷やそうにもできず。バブルを芽のうちに摘むのは難しい。
FRBの利上げに対して、米国債市場がイールドカーブのフラット化という問題を提示しています。もし、逆イールドになればリセッションが起きるリスクが高まります。
米国利上げが終われば、100円割れの円高に?
◆米ドル/円の月足チャート DMMFX 2018年6月20日
米ドル/円は、110円前後の動き。FXでは、米ドル/円のボラティリティの低下が話題になっており、日銀の思惑通りの円安&インフレ2%に達さないまま。出口戦略で欧米に遅れている展開。黒田総裁の2期目は、低インフレに苦しむ状態が続きそうです。
冒頭で述べたように、米国の利上げ局面は終盤だと考えられる。2019年前半にかけて米利上げ「打ち止め」が市場のコンセンサスになる時、ドル円相場は100円ラインを突破するだろう。そうなれば、日銀は「ヘリコプターマネー」的な外形の追加緩和という円高阻止策発動を余儀なくされるだろうと、筆者は引き続き予想している。ロイター:パウエル議長
こうした状態から、みずほ証券の上野泰也氏は、米国の利上げ局面は、終わりに近付いているとの考え。2019年前半に米利上げの打ち止め⇒ドル/円の100円割れを予想。そうなると、円高を止めるために、日銀はヘリコプターマネーを発動するのではないかと。
現在の局面は、日銀リフレ派が願う最後のチャンス。日米金利差拡大による円安が続かねば、米国や欧州と異なり、いつまでも緩和によるマネーの垂れ流し状態。もし、米国の利上げが終わり、下げに転じれば、大幅な円高トレンドが起きるリスクがあります。