2018年の米ドル安について、いくつかの理由を紹介しています。今回は、元財務長官のローレンス・サマーズ氏の話。米ドルがユーロに対して10%以上低下した理由をFTのコラムに執筆しました。
FXで、米ドルは上がりやすい環境にも関わらず、下落中。
サマーズ氏の米ドル下落の理由
- 経済予測の情報修正
- 金融引締め
- 実質及び名目金利の上昇
- 完全雇用状態での巨額の財政刺激
- 保護主義の台頭
- 資本流出と流入の増加
米国の10年金利は、ドイツの金利より約230bp高く、日本の金利より約280bp高い。これは、今後10年間で米ドルが主要通貨に対して25%以上の下落を期待していることになる。
過去1年間の金利と米ドルの下落を考えると、ユーロに対するドルの期待値は約15%下がったと見積もれる。
10年国債利回り
- 日本:0.04%
- 米国:2.86%
- ドイツ:0.67%
◆ユーロ/ドルの月足チャート マトリックストレーダー 2018年3月7日
しかし、これだけでFX相場を判断するのは危険。
サマーズ元財務長官は、経済成長予想が高くなった国だけでなく、カナダ・メキシコに対しても米ドルは弱くなっていることを重視。
金利上昇と米ドルの弱さは、米国資産を外国人が買う、または、米国人が海外資産に分散しないように誘導する必要がある。いわゆるキャピタルフライトを心配しているわけですね。
このパターンは、カーター政権及びロバート・ルービンによる強いドル政策の前に生じた珍しいパターン。新興国では、国の政策に対する不安から頻繁に起こる。
サマーズ氏は、米ドルへの信頼感欠如を心配している様子
ドル安・信用を失う要因
- ムニューシン財務長官のドル安容認
- 完全雇用における財政赤字拡大
- FRBの独立性
- 外国投資に対する米国の受け入れ体制
- ドル資産保有者への攻撃
- 貿易戦争による米国の競争力低下(アルミ・鉄鋼の関税)
FX市場は、米国が健全なルートにいないとのシグナルを出しているとサマーズ氏は考えています。
仮想通貨ブーム・金価格の高値維持などは、米ドルの信頼欠如を表しているのかもしれませんね。