米国の税制改革法案が成立した時の株式・FXへのインパクトを佐々木融氏がロイターで解説しています。
以前より、2018年の米ドル/円相場は、レンジになるとの予想を公表している通り、税制改革法案が成立しても米金利や米ドルの上昇要因にはつながりにくいとの結論。もっとも株価は上昇するとの予想。
2017年米国税制改革法案が成立すれば。
税制改革法案は、12月2日に上院で可決されて上下両院の調整段階に入っています。
上下両院の調整が終われば、両院で採決を行い大統領署名によって有効となるのが流れで、下記二つのリスクがあることからクリスマス前に成立させようと議会は急ぎ中。
- 12月12日のアラバマ州上院議員補欠選挙
- ロシアゲート疑惑の進捗
共和党の強固な地盤で、負けはないと思われていたのがどっこい。共和党候補のロイ・ムーア候補にセクハラ疑惑が持ち上がり、読めない状況に。
100議席中、共和党は52議席を有するため、税制改革法案の成立に際し造反議員が3人になれば否決となります。記憶に新しい例が、医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃・代替案をめぐる採決です。こちらでご紹介した3人が反対票を投じ、廃案を余儀なくされました。
しかし、共和党のムーア候補が敗北すれば51議席に減ります。従って造反議員が2人出てくれば、税制改革法案はゲームオーバーとなってしまいます。アラバマ州選挙の重要性
選挙の結果は、12月22日~26日の間に発表されることから、もしも、共和党が敗北&税制改革法案の採決が2018年にずれこむとやっかいなことになりかねません。
税制改革法案が経済に与える影響
- 今後の10年間で年間1000億ドル(合計1兆ドル)の景気刺激策
- 法人税率20%への引き下げ
- 経済成長率の引き上げ効果は2018年で年0.25%
JPモルガン・チェースのアナリストは、S&P500が2018年末に2800位になると予想。
◆S&P500のCFD月足チャート GMOクリック証券
2650から2800への上昇を予想するJPモルガン・チェース
一方、米金利・FXへの影響は少なく、同じく2018年末の米10年債金利は2.7%程度、米ドル/円はレンジ相場と佐々木融氏は予想。
米国企業が海外に留保する利益の本国送金がドルを押し上げるのではないかとの声も聞かれる。しかし、当社では、約2.2兆ドルに上ると見積もられる米国企業の海外留保利益のうち7―8割がすでにドルで保有されているか為替リスクがヘッジされているとみている。従って、こうした留保利益が米国に送金されても、ドル買いにつながる金額はさほど大きくはならないと考えている。ロイター
米国企業からの本国送金の影響も小さく、累積海外留保利益へのみなし配当課税が用いられて、本国送金のニーズも小さい。
ただ、佐々木氏は、財政刺激策がFRBの利上げ期待を高める可能性が米ドル上昇に繋がるかもしれないとは見ているようだ。
しかし、これはあくまでも減税法案のみを対象にした考え方で、FXには、その他にもさまざまな変動要因があります。米減税法案の影響が少ないならば、他の要因で動く可能性があることを忘れてはいけません。