7月の米雇用統計は予想以上に好調でした。FRBは将来どうなるかはさておき、計画通り出口戦略を推し進めるでしょう。その過程で米国経済が大きく鈍化すれば、金融引締めをストップすればいいだけの話。
データを確認しながら、慎重に利上げ&バランスシートの縮小を行うと思います。また、そうしなければ、膨らみ過ぎたバランスシートに足を引っ張られて、次の経済危機に対処できません。そのような事態になることは、FRB畑を歩むイエレン議長は看過しないと考えます。FXを取引する方は、9月のFOMCに大注目。
FRBが計画通りに金融引締めに向かう理由
FRBが金融引締めに向かう理由の一つは順調な雇用統計。
7月の米雇用統計は予想を上回る
7月の米雇用統計は、市場予想を上回る好調ぶり。
- 20.9万人(予想18.3万人)
- 時給の伸びは、前月比0.3%、前年比2.5%と増加
失業率は4.3%まで低下し、2017年の非農業部門雇用者数は、毎月20万人前後の数字を保っています。雇用関係の数字は、もはや言うことなし。好調が続いたまま。
回復しつつある原油相場
インフレ目標2%を達成するための重要な指標の一つが原油相場。シェール開発の流れに乗って、下落した原油相場は50ドルの手前まで回復してきました。
25ドルあたりまで下落した時期から、FRBは原油相場が回復すれば・・・と言い続けており、産油国・中央銀行とも50ドルを原油価格のメドにしています。大きく下落した時期には、サウジアラビアですら、危機感を抱きましたから、今後も価格下落局面には、OPEC及び産油国の協調減産やシェール生産の減少が期待できます。
ただし、長期的な原油価格については、新エネルギーの開発・台頭によって、下落するとの予想が出ています。
●株式・原油相場の月足チャート GMOクリック証券 2017年8月5日
上昇を続ける米株式市場
米国の景気拡大は9年目に入り、米株式市場は上昇を続けています。
これは、FRBの緩和・低金利政策が一つの要因。しかし、いつまでもFRB頼りではいけないというのもまた事実。政府や中央銀行に頼る人や企業が成功し、自力で生きようと考える人や企業が損をするというのはモラルハザードの一つですし、政府や中央銀行が抱える負債が増えていくことに。
政府や中央銀行のバランスシートが大きいままだと、次に金融危機や経済危機が起きた時に、中央銀行の打てる手が限られてしまいます。
市場との対話は大切ながら、株式市場が政府や中央銀行頼みになるのは、長期的に良いことではありません。
低金利の継続は資産バブルに向かい、本来、資金が必要な分野に回っているのかも疑問ですしね。
トランプ政権による米ドル安の進行
トランプ政権のぶち上げたインフラ投資&減税は、今後どうなるか予断を許しません。その点、上昇を続ける株式には不安が大きい。
ところが、トランプ政権の成し遂げた大いなる成果の一つは、米ドル安。
◆ユーロ/ドル、米ドル/円の週足チャート GMOクリック証券のFXネオ
トランプ政権発足後に、ユーロ/ドルは大幅な米ドル安ユーロ高で動いています。
ロシアゲート疑惑・支持率低下など問題を多々抱えながら、米ドル安の進行で、経済は好調を維持。
元々、トランプ大統領はドル高や通貨安競争を警戒しており、米ドル安を望んでいました。FRBの利上げや金融引締めで米ドル高に向きかねないことを就任前から心配していましたからね。政治的な混乱やオバマケア廃止法案の不通過などが狙ったものであれば大したものです。さすがにそれは言い過ぎですけどね。
今後も、減税・インフラはもちろん、債務上限引き上げ交渉など課題を抱えていますから、FRBの金融引締めによる米ドル高を一部相殺できるかもしれません。
ファンド運営者のピーター・シフ氏は、FRBが利上げペースを変えないのは、失敗した時にトランプ大統領のせいにできるからだとまで話しているくらい。
今後のFRBは、データ次第及び利上げを急がないという姿勢を崩さないまま、9月のバランスシート縮小・12月の利上げに向かって進むでしょう。もちろん、データ次第で、このシナリオは変わってくることにご注意ください。
2017年9月のFOMCは、FX・株式市場にとって、かなり重要な金融政策決定会合になりそうです。