JPモルガン・チェースの佐々木融氏は、中長期的な円高路線を変えていない様子。このところ、続いていた円安トレンドについて、そろそろ円安の賞味期限ではないかとコメント。
FX・金融市場の分析で、佐々木氏は信頼度の高い方。
2017年前半の米ドル/円相場の材料
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米ドル/円相場は、どのように動いたのかロイターの佐々木融氏は以下のように見ています。
2017年は、ドル安メインの展開で下落基調を続けて、円が強い通貨として動きました。その材料は・・・
- トランプ政権による日米貿易摩擦
- 北朝鮮のミサイル・核問題によるリスク相場
- 欧州の選挙:3月のオランダ、4・5月のフランス大統領選挙
- 5月中旬からのトランプ政権ロシアゲート疑惑
北朝鮮やロシアゲート疑惑は、想定外の出来事で、FXトレーダーの方も驚かれたと思います。
2017年の6月中旬までの主要通貨は、米ドルが最弱・日本円が最強で、年初の118円台から108円台まで下落。
しかし、6月半ばごろから各国の中央銀行がタカ派(利上げ・金融引締め)発言が相次ぎ、主要国の長期金利は上昇。ところが、日本は、長期金利の上昇を抑える指値オペを実施して、その動きを止めました。
そのため、日本と主要先進国の金利差が拡大して、為替相場は円安トレンドが進行。最近の円安は、この金利差(FXでのスワップポイント)が主な要因。
FOMCで利上げを行った6/14以降は、日本円が最弱通貨となりました。
●米ドル/円の日足チャート:2017年7月14日 アイネットFX
2017年前半の米ドル/円相場の流れと材料。円安トレンドが継続するかどうか重要なポイントに来ています。
円安トレンドの材料は金利差だけではない?
日銀が7月19・20日に開催する金融政策決定会合で、2017年度の物価上昇率見通しは下方修正の見通し。
産経新聞の記事では、4月の1.4%から0.1~0.4ポイント引き下げる方向。4月の価格改定で値上げの動きが進まず、賃上げの動きが鈍かった。JPモルガンは、+1.4%から+1.0%へと引き下げを予想。
経済成長率予想は上方修正の見通し。
こうなると、日本の金融政策を引き締めるのは、まだ先の話になりそうです。日銀は、量的には緩和縮小の方向ながら、金融引締めとはいかず、他の中央銀行との金融政策及び金利差は、広がる可能性が高い。
JPモルガンの金利ストラテジストチームの2017年末の予想では、米国の金利上昇により日米金利差は230bpから260bp程度に拡大。
- 日本10年国債金利:0.05%(7/14は0.07%)
- 米国10年債金利:2.65%(7/14は2.35%)
●対外直接投資による円安トレンド
金利差以外の円安トレンドとして、対外直接投資があげられます。
☆5月国際収支では、直接投資が1.6兆円の流出超。1-5月合計で7.8兆円。これは、前年同期比58%の増加。これによる5月の円売り金額は、3.2兆円に達する。
☆6月の対外証券データは、外国株式投資が1.1兆円。5月の1.2兆円に続く外国株買い。6月の投信買い越し額7932億円は、2005年以来の最大。
この流れが今後も続けば、円安トレンドは継続する可能性が高くなります。
円高トレンドの材料
次に円高トレンドに転換する材料を見てみましょう。
- 北朝鮮情勢の悪化
- 安倍内閣の支持率下落
- 日米貿易摩擦の拡大
- 日本の円安けん制リスク
- トランプ政権のロシアゲート疑惑
これらを佐々木融氏は上げています。さらに、ドイツの選挙やイタリアの選挙(時期未定)などもリスク要因。
そして、最大のリスクは、米国の不況入りでしょうか。金融引締めを行うスピードと米国景気のダウンリスク。もし、米国がリセッション入りすれば、FRBは金融引締め・バランスシート正常化から緩和方面に舵を切ることになります。
そうなれば、円高に動く可能性が高くなるでしょう。2017年前半の米ドル/円相場も激しく上下動しましたし、後半も同じように、様々なリスク要因を織り込んでの相場になると思います。