2017年3月の日銀短観が4月3日に公表されました。企業の景況感が回復したこと・雇用の人手不足がバブル期並みになったと注目を集めています。
その割に、賃金はなかなか上がらないというジレンマは抱えたまま。仕事の内容は、以前よりはるかにハードになったのに、昇給・昇格はなく、競争も激しい状態です。
想定為替レートは以下の通り。FX及び今の為替相場よりはかなり円高水準を想定
2017年3月の日銀短観:想定為替レートと人手不足
2016・17年度の想定為替レート(大企業・製造業)
- 2016年12月:104.90円
- 2017年3月:107.30円(2017年度:108.43円)
大企業の事業計画として、いずれ、円安に行くと予想している模様。2016年度の107円台から108円台へと上昇しています。
●日銀短観:2017年3月の雇用人員判断の推移 クリックで拡大
団塊の世代がリタイアする中、人手は足りません。
元日銀理事の早川英男氏が東洋経済に書いたコラムをFP編集部が紹介しています。
「建設業界が残業時間の制限に適用猶予を求めているようなときに、景気対策で公共事業を増やしているのは愚の骨頂というほかあるまい。」早川英男氏
政府は、2017年度の予算案を決定し、一般会計は97.4兆円と過去最大。早川氏いわく政権の財政政策は愚の骨頂。人手が足りない建設事業に予算を投入。労働コストを上げて、物価上昇をさせたいのではとの意図があるのではと考える程です。
過去から続いてきた利権を崩すのは、難しいですね。公共事業以外に資金を投入するには、まず予算を削らねばならず。そこがとても難しい。
人手不足の解消法は3つ。
- 移民の導入
- 労働参加率の上昇
- 生産性の向上
どれも、なかなか難しい。ゆえにAI及びロボットの導入という道筋も出てきています。
●政府予算:財務省
BNPパリバの河野龍太郎氏;100円を基準に
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は、自民党の政治家から円安が望ましいのかどうか質問を受けたという。ロイターの記事から紹介します。
- 不況であり負の需給ギャップがある場合、金融緩和を行い、円安を促すのが良い
- 景気拡大により完全雇用に達したら、円高が良い。金融緩和は手仕舞い、円高を促す
供給が制約されて、経済全体の拡大ができなくても円高による輸入増加で消費水準を高めて経済厚生を改善できるとの意見。
これまで、自民党は、政党全体の意見として円安を望んでいました。その空気が変わってきたかもしれません。一定水準の円安に達した&金融緩和の出口を意識する必要がありますしね。
人手不足でどこも困っているのだから、1ドル=100円を割り込んだ途端に存続が難しくなると悲鳴を上げるような輸出企業を、金融緩和による円安誘導で守る必要はあるだろうか。もしそうした企業が解散すれば、生産性の高い企業が雇用を吸収し、経済全体の生産性上昇率も改善するはずだ。~購買力平価の視点で考えるなら、控えめに見ても、1ドル=100円を中心に、90―110円が均衡的なレートだろう。もちろん、短中期的な均衡レートは金利に大きな影響を受けるが、現在の金融政策そのものが経済ファンダメンタルズと必ずしも整合的とは言えない。ロイター
若年層が少なくなり、労働人口が減る中で、輸出中心の製造業を守り続ける必要があるのかどうかは大事なポイントです。むしろ、サービス業そして世界的な競争力のある産業に資源を集中すべきというのが河野氏の主張です。
そして、米ドル/円のレートは、100円を基準に90-110円が均衡水準。今のように100円を守り続ける・金融緩和でインフレ率2%を目指しても意味がないというのは、気になります。自民党及び日銀は、今後の金融緩和の終りについて、どう決着を付けるのでしょうか。
●米ドル/円をはじめとした日足チャート:2017年4月5日
GMOクリック証券のFXネオ
今の為替相場は、全般的に円高が進み、米ドル/円は、110円を壁にして抵抗中、ミセスワタナベをはじめとしたFXトレーダーは、円高に動くと米ドル買いを行います。
世界的に政治・経済リスクが高まっており、円安はトランプ政権を刺激する中で、100円割れはありえるのでしょうか。JPモルガンの佐々木氏も2017年の100円割れを予想しており、円高論者が増えてきたと思います。
こういう時こそ、外貨預金にできないFXのメリットを生かして、米ドル売り円買いポジションを検討しておくこと。フランス大統領選挙でルペン氏が勝てば、100円割れは早くも5月辺りに実現するかもしれません。