米国議会で議論されている暫定予算案が決まらないと、米国連邦政府機関の閉鎖がありえると警告が出ています。ブルームバーグの報道では、上院民主党のシューマー院内総務は、下記の内容を反対していると共和党に警告。
期限が近くなるとリスクオフの円高リスクが高まるので、FXでは注意すべきポイント。
暫定予算案不成立で米国政府機関閉鎖のリスクあり
- 全米家族計画連盟への補助金停止
- 国境の壁建設費用反対
- 不法移民の逮捕や強制送還費用
- 防衛費の増加やその他予算の減少
暫定予算案が上院を通過できなければ、2017年4月29日から、一部の連邦政府機関が閉鎖することになりかねません。
2016年12月にも、暫定予算案はもめており、予算が切れる12月10日の1日前に何とか成立。この予算が2017年4月28日に切れます。前回は63対36の賛成多数で可決後にオバマ大統領が署名してことなきを得ました。
過去の政府機関閉鎖はwikiをご確認ください。
本当に、米国は世界一の超大国なのでしょうか。近年は、毎年のように予算問題・債務上限問題と国内政治で問題ばかり起こしています。小国であれば、世界経済に与える影響は小さいのですけどね。
トランプ政権は、オバマケア代替法案でも共和党強硬派のフリーダム・コークスの賛成を得られず。その後も4月の可決を目指すとして、心配する必要はないとツイッターで呟いています。
しかし、金融市場は、当然、政権の運営能力に疑義を呈しており、金利が乱高下したりドルが売られたりしています。FXトレーダーも最近の為替相場に一喜一憂していることでしょう。一応、米ドル安円高に歯止めがかかった感が出てきましたが、今回の暫定予算案の不成立リスクも待ち構えています。
特に、民主党が懸念している米国家族計画連盟(ブランド・ペアレントフッド)への補助金について、MARKETHACK様が詳しく書いています。
プランド・ペアレントフッド(Planned Parenthood Federation of America、PPFA。全米家族計画連盟)は、アメリカで人工妊娠中絶手術、避妊薬処方、性病治療などを行っている医療サービスNGOである。プロチョイス(人工妊娠中絶権利擁護派)の圧力団体である。創設者はマーガレット・サンガー。wiki
米国は、キリスト教右派を中心に人工中絶反対派も多く、選挙の争点になっている程です。オバマケアに反対したフリーダム・コークスは、このブランド・ペアレントフッドへの補助金も反対。
プランド・ペアレントフッドは民主党からは支持されているので、もしプランド・ペアレントフッドへの予算振り分けを止めてしまったら、そのような予算案は上院で必要票数60票を獲得できないのです。もしプランド・ペアレントフッドへの予算振り当てを予算法案の中に残したら、今度は共和党財政保守派が離反し、予算が立てられなくなると同時に、税制改革も頓挫するリスクが高まってきました。MARKETHACK
米国家族計画連盟(ブランド・ペアレントフッド)への補助金を巡って、継続すれば共和党保守派の怒りを買い、予算及政権が実施したいことが通らなくなります。中止すれば、民主党の賛成を得られず予算案は通りません。
ただ、予算案が通らなければ、補助金も停止されるので、その点では民主党に妥協の余地が出てくるかもしれません。もしくは、共和党保守派を説得して、ここは折れて、後からオバマケア全体を廃案にすればいいじゃないかと持ちかける手もあります。
米国の予算案成立プロセスと上院で60議席以上必要な理由
米国での予算審議におけるプロセスをみずほ銀行研究所の鈴木将寛氏の資料から見てみましょう。2005年と少し古いので現状と少し違うところもあると思います。
今は、暫定予算案になっていますからね。
- 毎年2月の第一月曜日に予算教書(大統領の予算)を議会に提出。
- 予算教書の提出から6週間以内に上下両院の各委員会が予算委員会に意見を提出
- 上下両院の予算委員会が予算決議案を審議
- 4月初めに上下両院の本会議が予算案を審議成立
- 4月中旬:予算決議の成立
上院で暫定予算案を通過させるには60人の賛成が必要とのことで苦戦が予想されています。
- 上院議席数は、民主党48対共和党52
- 下院議席数数は、民主党194対共和党241
法案を可決するには、過半数の賛成でOK。ところが、上院は、議員の演説時間に制限がなく【議事妨害(フィリバスター)】が行われると期限内に法案が成立させられません。この議事妨害をされた場合、全上院議員の3/5以上の賛成があれば、討論終結として、採決できます。
そのキーとなる3/5以上の賛成が60議席以上。
共和党議員が全員賛成しても52で60には足りません。ゆえに、暫定予算案の成立が危ぶまれているのです。期限が近づくにつれて、この話題は頻繁に登場してくると思います。FX・株式ともに注意が必要かと考えています。
トランプ政権は今後も、このようなリスクを抱えたままで政権運営をしいられそうです。