デフォルト危機を何度も繰り返してきた米国。債務上限問題が頻繁におきて、FX・為替市場を悩ませます。
前回の上限引き上げ法案は、2015年11月4日に承認・オバマ大統領が署名し解決。しかし、その債務上限引き上げ法案、2017年3月15日に期限が切れます。
米国は、2012年や2013年・2014年と毎年のように上限到達・引上げを繰り返し、その都度、米ドルをはじめ世界の通貨が乱高下しました。
この頃からFXトレードをしている方なら記憶にあることでしょう。日本がアベノミクスに沸いていた時期は、米国の債務上限問題がもう一つのキーワードでもありました。
トランプ大統領の就任早々に問題が生じるかもしれません。
2017年3月に期限切れ:米国の債務上限引き上げ
米国は、政府債務の上限を議会で決めていて、その上限を超えられません。米国フォーブスの調査では、1962年以降に債務上限引き上げを75回行っており、議会が納得しさえすれば、引上げ自体は可能。
ちなみに、連邦政府の債務は、 1917年成立の公債法(Second Liberty Bond Act)で上限が決められました。上限を決めないと政府は、政権維持・人気取りのために、財政赤字に偏りやすいとの知恵から生じた法律。
●2015年11月の引き上げ内容
- 2017年3月までの引き上げを認める。
- 歳出額を2016年度・2017年度の合計で800億ドル増額
このまま、3月15日を過ぎると、債務上限が復活し、国債発行に支障をきたします。
●米国連邦政府の債務推移:約20兆ドル
出典:世界経済のネタ帳
2011年は、この問題に絡んで、格付け会社のS&Pが、米国債の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げ(米国債ショック)。2012年12月は、「財政の崖」として激しい交渉が繰り広げられました。
オバマ政権時代は、民主党の大統領に対して議会が共和党の「ねじれ現象」が、2014年の中間選挙から続いており、議会との対立で多くの問題が生じていたのです。
トランプ政権に代わり、上下両院ともに共和党が多数派を占めていることから、ねじれ現象は解消されます。しかし、共和党内でも敵の多いトランプ氏のことですから、議会の協力を得られるか悩みの種になりかねません。
トランプ政権による財政政策
エコノミスト誌によると、米シンクタンク「TPC:税政策センター)」の推計で、トランプ氏の税制改革案を計算した場合。
- 2016~26年の10年間で税収は6.2兆ドル減少
- 連邦債務は7兆ドル以上拡大
- 2020年には22兆ドル、2026年には27兆ドルになる
トランプ政権の財政政策は、債務が増えると予想している専門家が当然のことながら多数。トランプ政権としては、米国に企業・工場が戻ってくれば、そこから上がる税収で赤字分を賄えると踏んでいるのでしょう。
リスクとしては、債務が増えるだけで、税収が上がらなかった場合。米国だけ繁栄して周辺国が衰えることでしょうか。
債務上限が引き上げられなかった場合
政府は期日を迎える支払いに対応するための借り入れが不可能になった場合、一部の年金給付を停止し、軍人・政府職員の給与を差し止め・削減し、利払いを遅らせる必要に迫られるが、これはデフォルト(債務不履行)に相当する。スタンダード&プアーズ(S&P)は2011年、財務省が近く一部給付金の支払い不能になるとして、米国の格付けをトリプルAから初めて引き下げた。債務上限引き上げ問題
もし、債務上限引上げ問題がこじれて、期限切れになった場合、政府機能が停止。上記、WSJの記事にあるようにデフォルトになってしまいます。そうなると世界経済は一気にリスクオフに転換し、マネーは、米ドルやスイスフランなどの避難通貨へと逃げ出すでしょう。
- 米国債ショック:S&Pが米国債の格付けを引き下げた時(2011年8月5日)
- US Debt Clock:米国が抱える負債額をリアルタイムで表示しています。
同時に2016年会計年度(2015年10月~2016年9月)と2017年会計年度(2016年10月~2017年9月)の予算まで承認していました。 つまり本年3月15日までの債務上限は18兆1000億ドルの「まま」ですが、現時点における債務残高は20兆1000億ドルになっているはずです。闇株新聞
今回は、問題なく債務上限問題をクリアできました。財務省のキャッシュバランスを縮小するという安全策も取られているとのこと。財務省のキャッシュバランスを3000億ドルから250億ドルに減額する必要もあり、国債入札に問題が生じる可能性は残っています。