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  1. 為替相場の基礎知識
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【ユーロ】の問題点、単一通貨・単一金融政策ゆえに調整機能が働かない!

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欧州の通貨【ユーロ】で、次々に問題が起きる理由は、単一通貨・単一金融政策にも関わらず、国によって経済状況や財政政策がバラバラなこと。

ユーロは通貨を統一して、ECBという中央銀行の元に一律の金融政策が実施されています。これによって、ユーロ圏内では、為替リスクがなく、貿易や人の行き来がしやすく、様々なメリットが生じます。ところが、為替相場がない分、調整機能が働かず、ユーロは多くの問題を抱えてきました。

FX・外貨預金で、ユーロ/円やユーロ/ドルを取引する人は、この弱点を知っておきましょう。

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●ユーロ/ドルの月足チャート:DMMFX 2016年6月29日

ユーロ/ドルの月足チャート

ユーロ/ドルは、0.85~1.6の間で変動。スプレッドも狭くFXでは取引しやすい通貨ペアの一つ。

単一通貨ユーロは、変動為替相場にある調整機能が働かない。

ユーロを利用する国々は、それぞれ、ファンダメンタルに差があります。強い経済力を持つドイツと弱い経済力しかないギリシャのような国が同じ通貨を使っているためにゆがみが生じます。

ドイツは競争力が高く、ユーロ/ドルが1.3や1.5でも耐えられる可能性があります。一方、ギリシャのように製造業の弱い国は、ユーロ高になると競争力を失う結果に、競争力ある産業である観光客もユーロ圏外からはユーロ高の影響で減るでしょう。

単一通貨ユーロはドイツに有利で他国に不利。

1.ドイツにとっては、ギリシャやスペイン・イタリアが存在することで、独自通貨をつかうよりもユーロ安に誘導できて輸出に有利。ギリシャやスペイン・イタリアなど競争力の弱い国は、ドイツの競争力が高いせいで、独自通貨よりもユーロ高になり輸出に不利。

2.金利水準も物価の安定しているドイツは低金利。スペインやギリシャは高金利の方がふさわしかったはず。ところが、ユーロによる単一金融政策のおかげで、政策金利も統一されてしまい、サブプライムローン時には、南欧諸国を中心に不動産バブルが起こる結果に。

ユーロを採用していなければ、為替相場の変動で経済回復のチャンスあり

もし、統一通貨を採用していなければ、不況や経済危機に陥った国はどうなるのでしょうか?

短期的には、非常に痛みを伴いますが、早めに経済が回復する可能性があります。

危機や不景気が起きれば、通貨は大きく下落します。すると、通貨安になったことで、製造業の競争力は回復し、観光客も増えて、景気が回復する可能性が出てきます。

為替相場が落ち着くまで混乱はするでしょうし、預金封鎖や株価下落・企業倒産などが起きて一時的な痛みは大きいも、膿を出しきるのが早ければスピードも速まります。これが為替相場による景気調整機能。

これが、変動為替相場による景気回復メカニズム。

統一通貨ユーロの経済・インフレ格差を調整する3つの方法

ユーロ圏の経済格差は著しい。しかし、それを調整するメカニズムがないことが最大の問題点。

正直に言うと、これは少し経済を勉強すればだれでも分かる問題。

それでも、何とか格差を調整する方法が3つありますので、それをご紹介します。

●ユーロ導入以降のインフレ率推移

ドイツ・ギリシャ・イタリア・キプロスと4つの国のインフレ率を比較しても、それぞれに差があります。なのに、統一通貨ユーロと統一した金融政策の導入は無理な話。

インフレ率の推移

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世界経済のネタ帳

この経済やインフレ格差を調整する方法として、第一に労働移動が考えられます。

不景気で失業率が高い国から、好景気で失業率が低く人手が足りない国に労働者が移動することで、不景気国のデフレと好景気国のインフレが均されるという理論。

しかし、これが十分に起きませんでした。EUパスポートを持っていれば自由に移動できるといっても生まれ育った土地から離れる人は一部。同じ国ですら難しいのに、ユーロ圏の人達は、EUで実現できると本気で思ったのか理想主義的考えに驚きます。

似た文化圏とはいえ、違う文化の人が移動することで起きる地元の文化破壊などの新たな問題が生じており、格差調整メカニズムとして失敗でした。

●各国の失業率

各国の失業率

世界経済のネタ帳

ドイツが低いからといって、失業率が平均化する程、ギリシャやスペイン・イタリアから大量に労働者が来ることはありません。

財政政策による調整

次に考えられるのが、財政政策による調整。景気が良い国は財政を引き締めて景気を抑えて、不景気の国は財政拡大で景気を刺激する方法。

しかし、不景気な国で財政を拡張することは困難。不景気の国はおそらく、財政収支も悪化しているはずで、財政拡大どころか財政緊縮を求められる可能性が高い。実際、経済危機に陥った国は、財政緊縮路線をIMFやEUから求められている。

ユーロ圏の財政収支

世界経済のネタ帳

強い国から弱い国に補助金を分配

かなり困難な道ですが、好景気で財政に余裕がある強い国から弱い国に補助金を出す方法があります。

一つの国ならば、国内の格差は、こういった補助金である程度是正されるでしょう。日本でも地方自治体に国が資金を配分する制度を取っていますし、恒久的に弱い地域には、採算度外視で、支援が行われています。

ただ、ユーロではどうでしょう。具体的にはドイツが、他国の面倒を見る制度をほぼ永遠に作るに等しいこの制度を作ることができるのでしょうか。ドイツ国民は、そんなことをする位ならば、ユーロから抜けるでしょうし、現在は、政治的に無理な方法です。

このように、ユーロを利用する国々は、格差が拡大しやすい傾向があります。ドイツが強くなり弱い国は弱くなる。それでも、ドイツとしては、他国のせいで足を引っ張られるという意識をそう簡単に変えないでしょう。

他国が足を引っ張るおかげでユーロが安くなり、その恩恵をドイツが最も受けるということは無視されます。経済格差は広がり、それを為替相場や金利で調整できませんからね。

このことを理解した上で、FXでユーロを取引しましょう。常に爆弾を抱えているのがユーロという通貨で、完全にユーロ危機が収まることは、根本からの対策を施さない限りありません。

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