為替相場が固定されている場合、通貨の自動調節機能が働かずに、貿易赤字や黒字が恒常化する恐れがあります。ギリシャ危機がなかなか収まらないのも統一通貨ユーロを導入したことで調節機能を失ったが故。
世界の為替相場が固定から変動相場制に変わったのは、1971年のニクソンショックからスミソニアン体制へと続く一連の流れの中でした。ドル/円相場は1ドル360円から308円に切り下げられ、それでも固定相場は維持できずに先進国は変動相場制へと切り替えを行った。
経済危機と自動調節機能
経済危機に陥った国は、株価・債券・通貨のトリプル安に見舞われます。そのこと自体は大変な事態ですが、数年で問題解決することがほとんど。
それは、通貨が大幅に下落し、構造改革の効果が出てくるとともに、経済が回復していくからです。
- 通貨が強くなれば、輸出競争力は減少して、輸出が落ちる。
- 通貨が弱くなれば、輸出競争力が増加して、輸出が増える。
これが、通貨の自動調節機能。自国の実力と為替レートは、多少のずれはあっても長い目で見れば正しい。無理な水準に為替相場を誘導しても最終的に、どこかにしわ寄せやひずみが出てくることになります。
例えば、ジョージ・ソロスとイングランド銀行のポンド防衛戦は、ソロスの勝利に終わっている。1992年の英通貨危機時は、ポンドの対ドル年間通貨下落率は19.3%と大きく下落し、通貨同盟(ERM)から離脱することに。一方、実質経済成長率は1991年にマイナス1.4%を記録するも通貨下落で回復し、1993年に2.2%成長を達成。
●英ポンド/ドルの推移
経済が拡大成長している国の通貨は、上がりやすい。また、経済が成熟期に入った国の通貨は、安定もしくは下がりやすい。その理由として、成長期にある国は通貨需要が高いことがあげられる。また、物価や金利が成長期の国は高く、そのことも金融市場で高く評価される。
●日本の貿易収支の推移
日本も震災により、原子力発電がストップし、化石燃料の輸入が増えることで、貿易収支の推移は悪化。それも一因として、ドル/円レートは、ドル高円安方向へと進行。
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ユーロ圏で起きる経済危機がなかなか収まらない原因の一つが、この通貨の自動調節機能効果が弱いことにあります。ギリシャで危機が起きてもユーロ全体で見た場合に好調であれば、共通通貨ユーロの下落幅は小さくなりますし、場合によっては上昇することすらありえます。ギリシャが、以前のように通貨ドラクマであれば、ドラクマは暴落して、経済の実力に合わせた水準へ落ち着きます。