1990年代に生命保険会社が、とんでもない額で外国債券に投資をし、米国のトレーダーたちに、「The Seiho(ザ・セイホ)」と言われ、市場を席巻していた時代がありました。
今回の黒田日銀総裁の異次元金融緩和で、また、生命保険会社に注目が集まるかもしれません。
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日銀の金融緩和で国債利回り急低下
最近、生命保険会社が外債(株式)の投資を増やすとの報道が増えています。
その理由の一つは、今回の黒田日銀体制下の金融緩和による国債の利回り急低下。
●10年国債利回り
日本10年国債利回り: 0.584 04/10
米国10年国債利回り:1.805 04/10
英国10年国債利回り: 1.784 04/10
ドイツ10年国債利回り:1.305 04/10
フランス10年国債利回り:1.868 04/10
2013年4月10日の国債利回り:国際投信投資顧問
GMOクリック証券の米・日10年債利回りチャート
生命保険会社の主な運用先は国債
生命保険会社は、予定利率をあらかじめ決めて、顧客に保険商品を販売しており、顧客が支払う保険金を運用することで保険会社は収益を上げています。
その保険金(預かり資金)の主な運用先は、日本国債です。つまり、国債の利回りと予定利率の差が、生命保険会社の主な収益になります。ところが、今回の日銀の異次元の金融緩和で、日本国債の運用では逆ザヤとなり、外国債と株式等に資金をシフトせざるを得ない状況になってしまったのです。
日経新聞の記事でもある生保会社の運用担当者が国債購入を中止したとの談話がのっています。
ザ・セイホの持つパワー
今回の株式の上昇では、外国人投資家の買い越しは6か月連続で、この間の買い越し額は6兆円近くだけです。
もし、生命保険会社が、株式の保有割合を10%に増やすと、その購入資金額は、約11兆円も増えます。
もし、生命保険会社が外国債の保有割合(18.2%)を30%に増やすと、その購入資金額は、約30兆円強も増えます。
今後のザ・セイホ:生命保険会社の動きは注目です。
そして、この思惑により、黒田日銀総裁の緩和策発表後に、米国債やヨーロッパ国債が買われました。(生保が動く前に外国人の外国債先回り買いではないか?)
生命保険会社の有価証券保有額
国内生命保険会社43社の23年度における有価証券金額と対有価証券額の国債・株式・外債の割合(生命保険協会)
●有価証券の金額:258兆6736億円
・そのうち国債の保有額:141兆2757億円←対有価証券保有額の割合:54.6%
・そのうち株式保有額:14兆7444億円←対有価証券保有額の割合:5.7%
・そのうち外国債保有額:約47兆円←対有価証券保有額の割合:18.2%
日経の記事では、資産総額3百兆円を超える総資産を持つと言われ、規模の小さい欧州各国の債券市場を揺るがす可能性を報道しています。
バブル崩壊時に株式や不動産で大損を出した経験から、「今回の株高でも株式を買い増すという議論はない」とのことで株式より外国債券に資金が向くのではないかと指摘。
ただ、株式や不動産だけでなく外債でも損失をだしていたはず!
2013年4月19日、松尾生保協会会長が、外債買い増すことが選択肢と発言。
ザ・セイホとは
日本の生命保険会社は、バブル経済のまっただなかで欧米に怖れられていた。保険料収入で得た巨額の資金で日本国内・海外のあらゆるものを買い漁ったのです。
保有している有価証券や債券の売買、そして、為替ヘッジ・為替差益狙いの取引で一回あたり数百億円~数千億円の資金を動かす巨大投資家だった。
ライファーへと呼び名が変化
生保は、「ライファー(Life insuer)と呼ばれるようになっています。また、かつてと違うのが為替リスクを取らなくなってきたこと。
投信による外貨投資は、為替ヘッジを付けないことが多いが、生命保険の外貨投資は「ヘッジしたりしなかったり」
野村証券のチーフ為替ストラテジスト池田雄之輔氏によるとセイホ(ライファー)の為替ヘッジ比率は50%程で、その時の状況による変わるとのこと。
生保が外貨リスクを拡大して円安フローを生み出す要因は次の3つ
- ヘッジコストの上昇:1~3か月物の日米金利差、米金利上昇によりヘッジコストが割高になるとヘッジ比率は低下
- 株価の上昇:株価が上昇して含み益が大きくなると、リスク許容度があがる
- 円安シナリオが立てやすい:日米金利差拡大などで円安トレンドがはっきりするとヘッジ解除に動く