スイスフランは、「避難先・安全な通貨として有名」で投資家がリスクを避けたい局面(リスクオフ)の場面では、日本円とともに買われる通貨。対ユーロに上限設定を長らく続けた後、2015年にいきなり撤廃したことで市場にショックを与えました。
なお、スイスは、観光・時計などの精密機械・化学・金融業など多彩な産業を持つ国です。ヨーロッパの中心に位置しながらユーロに加盟しておらず独自路線を取っています。
スイスの基礎データ
・面積:4.1万平方キロメートル
・人口:770万人
・GDP総額:4,946億ドル(2009年)
・貿易収支:10億スイスフラン(2011年3月)
・失業率:3.4%(2011年3月)
欧州は、強い経済と弱い経済の国を融合させた事をもともとの要因として、ギリシャを始めとしたPIIGSを抱えており国家財政の悪化が叫ばれユーロが今一つ上昇しきれない状態。
ドル・円も避難先として有力、そして、欧州にありながらユーロに加盟せず安定した経済力を持つスイスフランがリスク時は買われます。
スイスは欧州の中でも安定した成長を続ける
スイスフランの傾向
- ドルやユーロ・円が不安定になるとスイスフランが買われる傾向にある。
- 金利は常に低めのため、金利狙いの取引は少ない
- 政治的にも中立国であることから紛争の影響を受けにくい
- 大手輸出企業が多くスイスフラン高により輸出低迷を嫌う。
- 輸出先は欧州、特にドイツが多くドイツ景気の影響を受けやすい
ユーロ/スイスフランやスイスフラン/ドルは取扱いのない会社もあります。金利が低くスワップポイント狙いの通貨ではありませんが、トレード・リスクヘッジの保有としては、魅力的な通貨がスイスフランです。
スイスフランはユーロ相場に上限を設定
2011年の米国・欧州の通貨危機によりスイスフランが買われて上昇を続けていたため、スイスフランの対ユーロ相場に上限を設定しました。
スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は2011年9月6日、スイス・フランの対ユーロ相場に上限を設定すると発表した。
上限設定は30年余りで初めて。
必要となれば「断固たる決意」でこの水準を防衛すると表明し、フランは過去最大の下げを演じた。
中銀は「大幅で持続的なフラン安を目指す」とし、「即時実行で、ユーロについて1ユーロ=1.20フランを下回る為替レートを容認しない。
この下限レートを断固たる決意をもって防衛する。無制限に外貨を購入する準備がある」と表明した。
出典:ブルームバーグ【スポンサーリンク】
●外為オンライン:ユーロ/スイスフラン相場月足チャート
2011年8月にはユーロ安スイスフラン高が進み「1.0067」まで高くなりました。
●スイスフラン/円の月足チャート
日本円はスイスフランに対して介入後も高くなりましたが2012年秋から流れが変わり大きく円安方向へと進みました。
無制限介入によりインフレになるリスク
一方、自国通貨売りをするのならば、技術的には自国通貨を増刷すれば無制限の介入が可能な理屈だ。ただし、自国通貨を売りまくると、あふれ出す通貨供給量がインフレを巻き起こす可能性がある。スイスフランの挑戦
自国通貨が高くなることを防止するために、自国通貨を売る・意図的に安くなる政策を採る⇒リスクとして考えられるのがインフレです。ではスイスでハイパーインフレは起きたのでしょうか?
無制限の為替介入で自国経済を守ると公約したスイス国立銀行(中央銀行)のヒルデブランド総裁は、多額の介入コストよりも高くつくインフレ加速という代償を払うことになりそうだ。ブルームバーグ
アレクサンダー・ジーグラー准教授は、スイスのインフレ率が2%を突破すると予想、その他にも金融の専門家たちはリスクを警告していました。
大きくインフレが進行している形跡はありません。2013年の推計値は-0.2%とむしろデフレが進んでいます。
スイス中央銀行の壮大な賭けは今のところ成功しているといえるでしょう。これは、介入で通貨価値を守る(安くする)ことはできないと考えられていたことに対して一石を投じる現象。
スイスフラン上限撤廃で市場に激震。
2015年1月15日、スイス中銀は上限を急遽撤廃。中銀預金金利はマイナス金利となる-0.25%から-0.75%へと引き下げ。
これによりできるだけスイス・フラン高進行を食い止める意思は示した。ECBの緩和などを踏まえてスイス中銀のジョルダン総裁は、上限維持が持続不可能だったと説明。
スイスフランは過大評価されているとのこと。スイスフランショック
●一気にユーロ安スイスフラン高に動く
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